自作詩『太陽に溶け』
- 昭和52年佐賀県文学賞詩部門一席。
- 19歳のときの作品で、当時はロックンロールにぞっこん惚れ込んでいました。
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太陽に溶け
ジャニス・ジョプリンに
パール
彼女は動の女だ
きらめく碧い海の焼けつきそうな甲板で
ロックン・ロールかい? パールの中さ
息でもつくかのように恋を忘却を
繰り返すのはパール
彼女のなかで無数のうめき
うめきが
彼女の腹部をしとねに胎児をはらむ
産院の白いシーツを血で染めながら
パールの瞳の星は乱舞する
新たな恋を夢にみて
LOVE,and SEX
LOVE and,SEX
SEX,and LOVE
(ええっ? ちょっと待ってよ)
いつの間にやら あやふやな方程式が
パールの脳裏に出現したが
それを解く間もなく動の女パール
産院の白さが 確かに少しずつ
彼女の頭を狂わしてゆく
紅い血
取り出された嬰児にこびりついた血は
確実に乾いてゆく
パールはしたたるような白い道を走ってゆく
彼女の愛した水色のスカーフだけを首に巻いて
パールの白い裸体は白い道に溶けてゆく
太陽に溶けてゆく
パールは溶けながら苦痛の直中を
歓喜の直中を駆けてゆく
溶けながら何かを呼び覚まし
己の一部一部をなくしながら駆けてゆく
残ったのはパールの愛した水色のスカーフ
どこまでもついてないさ
どんなにか水色とのセックスを夢にみただろう
地獄へももってゆけなかった
風に砂にさらされるだけの水色のスカーフ
いつかパールを愛した男が
薄れた記憶を呼び覚まそうと眉をくもらせる
水色のスカーフ
何も想い出せないまま男は
傷ついた馬の足をしばってやる
動の女パールよ
黄昏はいつもおやすみをいいにきたね
今はおやすみのかわりにさよならだ
さよなら パール……
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