日本はもう駄目だ――村上春樹『1Q84』 騒動
昔、一億人総白痴化という言葉があった。評論家・大宅壮一の言葉だ。
ウィキペディアを閲覧してみると、「テレビというメディアは非常に低俗なものであり、テレビばかり見ていると、人間の想像力や思考力を低下させてしまうという意味」とあった。1957年の発言だ。
今、テレビと村上春樹を入れ換えてみれば、何てぴったりくるんだろうと思った。
ファシズムの嵐、というものを体験したことのないわたしには、テレビもネットもたかが春樹の作品一冊にこうも白熱し、同じようなことをいっている状況に空恐ろしいものを覚え、ファシズムのオゾマシイ臭いを嗅いだ気がした。
実際、今の日本はひじょうに多くの人間がメディアに釣られて右往左往している危うい状況であることが、政治状況からもわかることだ。ファシズムの嵐の一歩手前、崖っぷちにあるのだ。
いや、大衆とはいつの時代も変わらないもののようだから、よい時代と悪い時代をわけるのは時代の病患を見抜く評論家が存在するかどうかだと思う。
それが見当たらないので、もう日本は駄目になるという絶望感に囚われてしまう。
春樹のようないい加減な(彼の引用一つとっても、それが如何にいい加減なものであるかをわたしは評論中で指摘した)小説ばかり読んでいると、日本人の頭はどんどん馬鹿になり、引きこもりと薬物中毒者は増えるばかりだろう。
何よりも、この現実世界を仮想世界と錯覚させる甘い磁力が、彼の作品には潜んでいるからだ。
彼は、現実逃避者たちの王だ。いや、金に目の眩んだ者たちの傀儡王だ。
彼を一流の知識人と思い込みたい信奉者は、彼が作中で名を挙げている作家たちを一冊一冊真摯に、自らの魂の存亡を賭けた自己との闘い……苦業と思って(春樹の本ほど容易には読めないだろうが)、いや騙されたと思ってでもいいから、読んでみるがいい。
そうすれば、彼がどんな山師か、本物とどれくらい違うかがわかり、春樹からの離脱にも成功するかもしれない。
※ 申し訳ありませんが、当記事に関するメールは受け付けておりません。
● 当ブログにおける関連記事:
- 文学界の風穴となるだろうか?
⇒https://elder.tea-nifty.com/blog/2010/06/post-9dc1.html - 評論『村上春樹と近年のノーベル文学賞作家たち』
⇒https://elder.tea-nifty.com/blog/2009/06/post-40a4.html - 村上春樹『1Q84 BOOK3』を書店で立ち読み
⇒https://elder.tea-nifty.com/blog/2010/04/post-c7b9.html - 1Q84 BOOK3(村上春樹著)の売り方、そして絵本作家の逆輸入現象から見えてくるもの
⇒https://elder.tea-nifty.com/blog/2010/04/1q84-book3-10fe.html - 新聞記事『少女漫画の過激な性表現は問題?』について
⇒https://elder.tea-nifty.com/blog/2006/11/post_a6be.html - わが国の不思議な出版事情
⇒https://elder.tea-nifty.com/blog/2006/10/post_e7b9.html
| 固定リンク
「文化・芸術」カテゴリの記事
- 日本色がない無残な東京オリンピック、芥川賞、医学界(またもや鹿先生のYouTube動画が削除対象に)。(2021.07.20)
- 芸術の都ウィーンで開催中の展覧会「ジャパン・アンリミテッド」の実態が白日の下に晒され、外務省が公認撤回(2019.11.07)
- あいちトリエンナーレと同系のイベント「ジャパン・アンリミテッド」。ツイッターからの訴えが国会議員、外務省を動かす。(2019.10.30)
- あいちトリエンナーレ「表現の不自由展」中止のその後 その17。同意企のイベントが、今度はオーストリアで。(2019.10.29)
- あいちトリエンナーレ「表現の不自由展」中止のその後 その16。閉幕と疑われる統一教会の関与、今度は広島で。(2019.10.25)
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- Mさん、お誕生日おめでとうございます(2023.11.07)
- 新型コロナはヘビ中毒で、レムデジビルはコブラの毒ですって? コロナパンデミックは宗教戦争ですって?(12日に追加あり、赤字)(2022.05.11)
- 萬子媛の言葉(2022.03.31)
- 姑から貰った謡本(この記事は書きかけです)(2022.03.15)
- クリスマスには、やはり新約聖書(2021.12.25)
「文学 №1(総合・研究) 」カテゴリの記事
- ついにわかりました! いや、憶測にすぎないことではありますが……(祐徳院三代庵主の痕跡を求めて)(2023.07.04)
- 第29回三田文學新人賞 受賞作鳥山まこと「あるもの」、第39回織田作之助青春賞 受賞作「浴雨」を読んで (2023.05.18)
- 神秘主義をテーマとしていたはずのツイッターでのやりとりが、難問(?)に答える羽目になりました(2022.06.22)
- 萬子媛の言葉(2022.03.31)
- モンタニエ博士の「水は情報を記憶する」という研究内容から連想したブラヴァツキー夫人の文章(2022.02.20)
「村上春樹」カテゴリの記事
- Kindle版評論『村上春樹と近年の…』をお買い上げいただき、ありがとうございます! ノーベル文学賞について。(2020.10.16)
- 7 本目のYouTube動画「雪だるま」をアップ。動画化したい作品について。Kindle書籍からの引用箇所を示すことが可能に。(2020.06.24)
- シモーヌ・ヴェイユと母セルマとガリマール書店の〈希望〉叢書(2018.10.10)
- カズオ・イシグロ氏の受賞ではっきりした、ノーベル文学賞の変節(2017.10.06)