Notes:不思議な接着剤 #49/バラバラでなかった歓び/『レンヌ・ル・シャトーの謎』を読む #3
Notes:不思議な接着剤は、執筆中の自作の児童文学作品『不思議な接着剤』のための創作ノート。
#49
2010/3/31(Wed) バラバラでなかった歓び/『レンヌ・ル・シャトーの謎』を読む #3
カタリ派、グノーシス、ナグ・ハマディ文書……と関心を拡げていく過程で、知的好奇心を充たされる一方では、わたしのすばらしいと感じるものが、ことごとく異端とされて絶滅させられたり、エジプトにある洞窟の壷に封じ込められて、あまりに永い時間を過ごさなければならなかったりで、昏い鬱々とした気持ちにならざるをえなかった。
しかし、『レンヌ=ル=シャトーの謎』を読み進めた今日の時点で、気持ちが晴れた。
というのも、著者たちの克明な描写と執拗ともいえるような推理により(さすがはBBC放送の人材だっただけのことはある)、これまでの過去にわたしが(同じ薫りがすることから)関心を抱いてきた哲学的な事柄のその殆どが掬い上げられ、時系列的に並べられ、関連づけられているではないか。
まるでパーティーのようだ!
ピュタゴラス、プラトン、新プラトン、グノーシス、カバラ、ヘルメス(錬金術)。異端カタリ派、フリーメーソン、薔薇十字。
ルネサンスと、フランス19世紀のオカルト運動は偶然ではなかったことになる。
前掲の著書によると、ルネサンスの中心人物はルネ・ダンジュー。フランスの運動の中心人物はシャルル・ノディエ(ノディエか! 妙に気になっていたのだが)
そこには、わたしの大好きなバルザックもいて〔※バルザックの出身に触れた過去記事はこちら。その記事からの抜粋を折り畳んでおきます〕、タロットを普及させたエリファス・レヴィは、わたしが考えた以上の役割を果たしていたことになる。
これらの思想の特徴としては、古代思想とつながりがあり、また東洋思想とのつながりがあって、同じ花壇に咲く花々のようであることだ。
著書によると、この花々は、ペテロ、パウロによる正統派キリスト教の裏側で、幾多の弾圧をくぐり抜けながら存続したマグダラのマリアによるもう一つのキリスト教に根差した文化現象ということになる。
ブラヴァツキーは神智学の諸著書で、こうした秘教の流れについて繰り返し触れている。
『レンヌ=ル=シャトーの謎』のテーマはイエスの血脈という別なところにあり、それが正しいのかどうかはわからないが(わたしはそこにはあまり興味がない)、バラバラなもののつながりを豊富な資料を用い、かなりのところまで証明してくれたという点で、興味深い。
古代思想とも東洋思想とも断絶し、科学の足枷となってきた正統派キリスト教とは対照的に、古代思想とも東洋思想とも一体感を保ち、その基本的姿勢が科学的であるゆえに、科学とも一体である、マグダラのマリアの教えに根差したもう一つのキリスト教。
現代科学は秘教の流れから切り離されて、暴走しかねない孤独な存在となっている。
もしこのもう一つのキリスト教が正統派の地位を占めていたなら、世界は変わっていただろうが、真の正統派の資格があるゆえに非暴力を好み、地下に潜らざるをえなかったのだろう。その地下にあってさえ、馬鹿馬鹿しい誹謗、中傷を浴びて……。
○当ブログにおける06年4月13日付記事『マザコンのバルザック?』
https://elder.tea-nifty.com/blog/2006/04/post_8725.htmlの追記(08年4月12日)より
伊藤幸次著『バルザックとその時代』(渡辺出版、平成16年)によると、バルザックの父親の家系は バルサという姓で、南フランスの地中海岸、ラングドック人であったということだ。母親はパリの裕福な商人の娘。
バルザックが「二十歳になる迄、自分をラングドック人として意識し、かつそれを表明していた」にも拘らず、それ以降、父方の家系を意図的に拭い去ろうとした形跡があるそうだ。その理由として、次のような事実が挙げられている。
父親の弟ルイ・バルサが「定額小作人の娘セシール=スイエを殺害したかどにより逮捕されていた。娘がルイの子供を宿したため、彼が暴力によって解決を図ったと見られたのである。1819年6月アルビの重罪裁判所にて有罪判決を受け、同年8月16日、恐らく無実であったらしいルイは、アルビにてギロチンにかけられる」。この事件はバルザックの作品『村の司祭』を連想させる。
わたしにとって、バルザックがラングドック人であったという事実は、興味深い。なぜなら、ラングドックというと、異端カタリ派を連想しないわけにはいかないからだ。
ラングドックは異端カタリ派の牙城となった。異端カタリ派が活発な活動を行っていた12世紀頃のラングドックは、原田武著『異端カタリ派と転生』によると、経済活動の活発な、文化的な先進地域だった。異端カタリ派には本来、知的で都会的な傾向があったということだ。至純の愛を謳う吟遊詩人たち――トゥルバドゥールの華やかな活躍もあった。
バルザックが二十歳以降ラングドック人としての自分を消そうとしたにも拘らず、その思想にはラングドック人の雰囲気が感じとれる気がする。
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