最期を生き始めた百合(自作詩)
強い香気を放ち、光るように白かった百合。
その色合いは弛緩し、
退廃と死の茶色が霧のように混じり始めた。
蕾がほころびかけた頃の花弁の一ひらが、
羽ばたきかけた白鳥の羽根に見えた。
その一ひらがもげて、落ちてきた。
すっくと立った百合が気炎を吐くので、
その周りで、
世界が寄せたり返したりしているかのようだった。
その反響も今はただの壁となって、
百合がもたれかかっている。
花瓶の水に、
自ら緑の脚を差し入れてきたかのようだった百合。
記憶をなくした囚人のように今は、
花瓶の水に茎の先を溶かしている。
もう何処へも行くつもりがないのだ。
精気そのもの、抽象的だった百合。
その百合が、
昆虫の硬さ、生臭さを備え出し、
最期を生き始めている。
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