高橋大輔選手が、シネマ『道』のテーマで銅メダルの滑り
フィギュアスケート男子。高橋大輔選手は、フリーを、シネマ『道』の「ジェルソミーナのテーマ」(ニーノ・ロータ作曲)で、軽やかに、コミカルに、切なげに滑り、舞った。
銅メダルの滑りとなった。
フィギュアスケートは、かつての日本選手のどちらかというと体操的な印象の滑りからすると、女子の荒川選手の滑りがその幕開きを高らかに宣言したかのように、芸術的になった。勿論、技術面もおろそかにはされていない。いや、確かな技術があってこそ、繊細な美的表現が可能になるのだろう。
情感がスケートリンクにこぼれ散るかのような優雅な滑りは、観戦にゆたかな満足感をもたらしてくれる。
旧ソ連時代、ソ連や東欧圏の選手がバレエを連想させる薫り高い滑りを披露してくれていたものだが、ロシア時代となってから揮わなくなり、ああいった育成には国家的な金銭の投入が必要なのだろうか、と物寂しい思いをしていた。
それが、わが国から、あの時代を思い出させるような滑りが現れるようになったとは……。ロシア人の監督の指導を受けたり、あの時代の感動を知る日本の監督の指導を受けたりした日本の選手が活躍するようになったのだろう。喜ばしいことだと思う。
高橋選手がテーマ曲に選んだ「ジェルソミーナのテーマ」は、シネマ『道』のテーマ曲で、『道』はイタリアの巨匠フェデリコ・フェリーニが1957年に監督した作品。
貧しい旅芸人を描いた名作で、ヒロインのジェルソミーナは、仕事の役柄からだけではなく、人間的にも道化師を髣髴させる、知的障害を感じさせる女性。しかし、彼女は、聖性にさえ通じるような理解力と気品のある表情を垣間見せることがある。
そんな彼女を自分のいいようにこき使う荒くれ男、ザンパノ。ジェルソミーナと男女の関係となってからも、その横柄な態度は変わらない。
ザンパノに傷つけられるジェルソミーナを天使のように励ますイル・マット。その悲惨な死。マットの死後、ジェルソミーナは精神に異常を来たす。そのジェルソミーナをザンパノは捨ててしまうのだった。
ザンパノの運転するオート三輪に引かれた幌車は、よろよろと進み、寒々とした景色の中に溶け込んでしまいそうで、幌車自体があたかも生きることの困難を訴えかけ、生きることの意味合いを求めている生き物のように見えた。
以下は過去記事からの抜粋。
〇道
フェデリコ・フェリーニ監督。
時に浮世離れした聖性を感じさせる頭の弱い女ジェルソミーナを演じたジュリエット・マシーナも凄かったのですが、獣性むき出しの荒くれ男ザンパノを演じたアンソニー・クインも凄かったです。
人間の真心の化身ともいえるようなジェルソミーナを失った己の愚かさに気づき、人気のない浜辺で慟哭するザンパノの姿はまことに哀切で、美しいものでした。
大学時代から何度となく、観た映画です。
巷の映画サークルによって喫茶店で上映された『道』まで、漁って観ました。
観すぎたためか、現在は食傷気味です。
娘が夢中になっています。
フェリー二監督の妻でもあるマシーナは『魂のジュリエッタ』では一転して、知性美の勝る感受性の強い女性を演じていました。
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