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2010年2月24日 (水)

Notes:不思議な接着剤 #39/異端審問官について

Notes:不思議な接着剤は、執筆中の自作の児童文学作品『不思議な接着剤』のための創作ノート。

#39
2010/2/24(Wed) 物語の細部を考える#2/異端審問官について

 #38で出した異端審問官は、紘平との会話に必要な最小限の仮の肉づけを行っただけで、実際の肉づけは、作品がその箇所に差しかかった時点で行うことになるだろう。

 その異端審問官についてだが、わたしは地裁で出会った最初の裁判官をモデルにしたいと考えている。

 あの冷淡さ、職務怠慢は、裁判を遅らせ、ボケの疑われる原告に訴えられた被告側に、無意味な準備書面の提出をどこまでも(と感じさせた。何しろ、いくら提出したところで、読んでいないことは明白だったから)強いるもので、わたしがお金持ちでさえあれば、訴えたいくらいだった〔カテゴリー:父の問題参照〕。あのような人物は、どんな国にも、どんな時代にも存在する、最も危険なタイプといえるだろう。

 無意味な裁判を速やかに終わらせてくれた、地裁の2番目の裁判官の温厚で飄々としたキャラも忘れられない。物語でも、異端審問の途中で異端審問官が交替するという設定にしたら、面白いかもしれない。あわやというところで、そんなトリックスター的な出来事が実人生でも起きることを、わたしは知ったのだから。

 土壇場で異端審問官が交替し、次の異端審問官は事件の全容を調べ直す。とすると、#38で下書きした問答は、この交替した人間味のある異端審問官との間でなされることになるわけで、もっと物柔らかなムードが異端審問官を包むことになるはずだ。

 最初の異端審問官は、偏見と独断をあらわにした、自分本位の質問しかして来ない。交替した異端審問官は優秀なので、疑念を抱いた部分に関しては、追及を和らげないだろう。そして、交替した異端審問官は、妥当な判断を示し、子どもたちに追放を命じる。子どもたちはマリーを救い出す。

 うーん、これでは面白くないなあ。手に汗握る、という展開にしたいわたしとしては。

 異端審問官の登場を逆にしようか? 最初に、職務熱心で教養が深くて、真の意味の敬虔を宿した異端審問官が担当し、追放という判決が下ろうとしていたところに、司教の異動があり、職務怠慢で冷淡な異端審問官が赴任してくるのだ。そして死刑――火あぶりの刑が下る。

 最初の異端審問官はなるべく異端審問を長引かせようとし、次の異端審問官はさっさと切り上げようとする。

 丁寧に作品を進めてきて、最後の仕上げという段階で、その作品を手放さなければならない画家のような心境で、最初の異端審問官は、新しい赴任地へむけて旅立ちました。

 あの3人の不思議な子供たち、美しい錬金術師の娘、そして魔物とおそれながらも、異端審問で火あぶりの刑を下す口実として自分たちが利用してきた竜のことが、かれの胸をよぎりました。

――竜のいる洞窟に被告を隔離し、竜に食べられたら被告は無実、食べられていなかったら魔物と結託した者として火刑台に送るという、馬鹿馬鹿しい裁判を自分たちは行ってきたのだ。それでも、わたしは、被告が逃げて、洞窟を無事に抜け出してくれることを願わずにはいられなかった。今回の事件では、あの美しい娘を救うのは無理でも、もう少しの時間さえあれば、3人の子どもたちを追放にしてあげることができたのだが……。

 最初の異端審問官がひそかにマリーに恋していたという設定にするのも、ほのかなロマンスが花を添えていいかもしれない。

 紘平たちの武器というと、翔太にくっついたピアノ協奏曲の泣き声と洞窟にいる大人しい竜だけだ。さて、どうなるのだ? 彼らがどうすれば助かるのか、今の時点ではどうにでも考えられるが、物語のテーマと絡み、核心をつくような案でないと、採用することはできない。

 物語がそこまで進むには、まだ時間がたっぷりとある。ゆっくりと考えていこう。

 いずれにしても、最終的に、神獣となった竜は、真珠色のすばらしいオーラを空間いっぱいに輝かせながら、マリーをのせて、もっと安全な場所、エジプトのナグ・ハマディの方角へ向けて飛び立つ。ここは、最高に壮大な描写にしたい。   

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