息子の初プラトン体験
昨日電話してきた息子が、最近プラトンを読み出したといった。
息子は理系、わたしは文系と綺麗に棲み分けているところがあり、息子は哲学を文系に容れて近寄らないところがあった。しかし、哲学は理系の要素も強い分野のはずで、だからわたしは理系的な部分はわかったような、わからなかったような気がし、明らかに高度となると飛ばす(しかない)。それでは、哲学書が本当にわかるとはいいづらい。
哲学書からの引用をふんだんに散りばめたブラヴァツキーの著作などには数学、化学、物理の公式が盛んに出てきて、ちんぷんかんぷん。とはいえ哲学書を読みこなすには高度な文系的な教養が不可欠で、要するに隅々まで教養にあふれていなければ、満足のいく理解は難しいということになる。そんな人は、少数派に属するのではないだろうか。
尤も、あのアリストテレスでさえ、プラトンの解釈で許せない間違いを犯した。アリストテレスは哲学を低級なものにしてしまった。
わたしは、わからないながら、わかる部分だけでもと思い、哲学書の薫り高さに惹かれて読む。その中でプラトン哲学は文系にも理系にもとっつきやすいだけでなく、哲学の最高峰に位置するものであることは間違いない。
「プラトンはわかりやすいね」と息子。哲学書を初めて読んだ初々しさを感じさせる謙虚な言葉の響き。なかなかいいね!と言外に匂わすムードも伝わって来る。「西洋の哲学書では、プロティノスとかフランシス・ベーコンとかデカルトとかロックとかライプニッツなんかも面白いけれど、プラトンは何しろ最高よ。プラトン以外は、どれを読んでも、部分的な感じがする」
東洋のものでは、諸子百家は、息子も結構読んでいる。インド哲学の深遠さにも気づいてはいて、インド神話は大層好きだ。
ブラヴァツキーは『アイシス・アンヴェールド』の中で、プラトン哲学は難解な古代インド哲学の諸体系の最もよくできた要約としても読めるという。
「もっと早い時期に読んでおけばよかったなあ」とも息子はいう。「そうよ。だから大学に入学したときにプラトンの2冊とバルザックの『谷間の百合』をプレゼントしたでしょ」とわたし。
プラトンの作品には、人として生まれたからには読まなければ損だと思う知識、心底人を満足されてくれる知識が詰まっていると思ったから、プレゼントした。
『谷間の百合』は、女性の心理が精緻に描き尽くされているだけでなく、優雅さとは何かをこれほど教えてくれるものは少なく、しかも処世術が織り込まれた珍しい著作だと思い、プレゼントしたのだった。この本を読むと読まないでは、人間の見方、接しかたに違いが出てくるような気がする。核には、バルザックの神秘主義哲学体系があり、エレガントな見かけからは想像もつかない骨格のしっかりとした作品なのだ。どうせ読まないだろうな、と思いつつ、プレゼントした。
それから7年近く経って、息子はプラトンに触手を伸ばしたわけだった。一旦読むとなったら徹底して読むほうだから、プラトンの主要な著作は読破するだろうし、歴史的背景もがっちりと捉えてくれるに違いない。現在『ソクラテスの弁明』『クリトン』『法律』を読んだところだそうだ。
この方面でも、息子を事典代わりにできそう。。。
息子の友人達の話もいろいろと聞き、楽しかった。その中にユニークな女友達がいる。彼女は大阪の化学会社に就職していて、頻繁に会うわけにはいかず、また頻繁に会うとなると息子は引いてしまうようだが(何しろ変わっているらしい)、得がたい友人の一人となるのかもしれない。
わたしも得がたい書き仲間(というより大先輩というべきだが)のKさんの文学的近況を知りたくて、この間から電話をしたいと思っているのだが、紳士的な人であるだけに、遠慮が先に立ってしまう。
純粋な友情に男女という性の障壁が立ちはだかるのは何とももったいなくて、惜しいことだと思う。主婦だと特に動きづらいところがあって困ってしまう。
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