同人誌の仲間からお電話
休刊になった同人誌の仲間、というより先輩というべきだが、Fさんからお電話をいただいた。
互いの作品の長所短所を率直に指摘し合うなど、長話をしてしまったが、16:00までデパート近くの喫茶店にいるから出てこないかとお誘い。もう一人、大先輩(品格のある作風、年齢も高齢)もいらっしゃるという。
出かけたいが、例によって、お誘いが直前だなあ。間に合ったら行くが、たぶん間に合わないといった。
Fさんは率直で面白い。以前、わたしの作品Aを読んで、この人は壊れていると感じ、精神病かと思ったという。あるいは、髪を振り乱した淫乱女かのどちらかと思ったそうで。
その作品Aは賞を狙った作品だった。壊れた作品でなきゃ賞がとれないと思った。とにかくあくどい作品にしたかったが、所々で本来の趣味が露出してしまったりして、半端なものとなり、それが壊れた人間が真面目に書いたような印象を与えたのだろう。
実際いいところまでいったが、舞台裏ではデビューを控えた人物が既に待機していた。賞がいつもそうした人物のためのセッティングとは限らないから、そのときの候補者であるわたしたちは運が悪かった。デビューはお膳立てを伴うものらしいから、どちらにしてもデビューは望めなかっただろうが、せめて平等感のあるレースを闘いたかった。
とはいえ、あれで賞がとれていたらいたで、賞の舞台裏のことを知らないまま、賞がとれたのになぜデビューできないのかと異様な無力感に苛まれていたかもしれない。
わたしに実際に会ったら(二人まとめて、同人誌主幹のEさんに呼び出されたときのことだ)、あまりにまともな人だったので、驚いたとか。
そのとき、Fさんは本当に髪を振り乱した淫乱女に会うと怯えていた様子で、初対面なのに、わたしを見てハッとし、次いで胸を撫で下ろす風であったから、変な気がしたが、そういう訳だったのか。
そういうFさんだって、泥臭い民話調の作風から、田舎じみたおじいさんをわたしに想像させた。実際には若々しく、教師だったせいか、学生みたいな雰囲気のある人だ。
ついでにいうと、書いている専業主婦というだけで、家事一つしない悪妻と思う人は多い。Fさんは、わたしの夫は天使みたいな良夫と思っているらしい。想像に任せるが。
物を書いてきて、世俗的にはいいことなんか、一つもない。
でもKさんがいっていたけれど、書くように生まれついているわたしたちには、どう世間にあしらわれようが、書く生きかたしかできないのだ。書いたりやめたりは、できない。Fさんも、Kさんも、わたしも、同類だ。こうした連帯感は、世俗的なメリットを求めて後天的(?)に書き始めたり、書いたりやめたりできる人々との間では生じない。
これ書いているうちに、間に合わなくなった。バタバタして出かけていたら、それこそ髪振り乱して行くことになった。
| 固定リンク