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2009年12月12日 (土)

Notes:不思議な接着剤 #32/カタリ派について#5

Notes:不思議な接着剤は、執筆中の自作の児童文学作品『不思議な接着剤』のための創作ノート。

#32
2009/12/12(Sat) カタリ派について#5/資料#3

 先日夫に図書館にお使いに行って貰い、借りた1冊なのだが、この本は凄い。異端の研究を真っ向からやっている人は筋金入りが多いようだが、この本もそんな研究者による著作のようだ。
 目次は細かい。以下。

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第1章 二元論宗教革命―古代のイラン、ギリシア、ユダヤ

     二つの原理―二元論的伝統の諸相
     双子の霊―原始ゾロアスター教の二元論
     古典ギリシアの二元論的伝統
     創造者と破壊者―ゾロアスター教とその世界宗教への道
     光と闇の父―二元論的伝統の動揺=ズルワーン教の出現
     「油を注がれたる者」と「バビロンの王」―アケメネス朝とオリエント諸宗教
      の変容
     造物主と告発者―ユダヤ教における二元論的展開
     光の王子と闇の天使―秘教的ユダヤ思想の誕生

第2章 融合と正統

     三つの帝国―ヘレニズム、ペルシア、インド
     東方における融合―大乗仏教とガンダーラ美術
     仲立ちのミトラス―ローマ帝国とミトラスの隆盛
     ミカエルとサマエル―ユダヤ教の天使論と悪魔論
     デミウルゴスと救済者―グノーシス主義二元論の諸相
     玉座と祭壇―ササン朝と国家宗教としてのゾロアスター教
     バビロンの予言者―マニ教の教理と開祖マーニーの生涯
     「偉大の父」と「闇の支配者」―マニ教とその宇宙論体系
     「光の宗教」の伝播―マニ教とその世界宗教への道
     ビザンツの継承者―マニ教とキリスト教の異端

第3章 大異端の勃興―東方キリスト教世界の異端諸派

     ステップからバルカンへ―ブルガール人のバルカン半島進出
     汗(ハーン)と皇帝―ブルガリアとビザンツの確執
     異教、異端、そしてキリスト教―異端パウロス派とビザンツ帝国の危機
     ローマ、コンスタンティノープル、テフリケ―ビザンツ皇帝の異教討伐
     ゾロアスター教の記念祭
     「暗黒のマニ教」の末裔―異端ボゴミール派
     ボゴミール派、始まりの謎
     試練の時
     アナトリアの異端―エウテュミオスの報告するボゴミール派
     トラキア・エウキテス派の三大原理―ミカエル・プセロスの報告するボゴミ
      ール派
     アレクシオス・コムネノスの十字軍―ビザンツ皇帝の反異端活動
     コンスタンティノープルの審判―異端告発の夜
     マヌエル・コムネノスとステファン・ネマーニャ―二人の君主による異端弾圧 

第4章 二元論教団―西欧のカタリ派異端

     西方の異端―カタリ派に先立つ二元論異端
     カタリ派の勃興
     ラングドッグのカタリ派―絶対的二元論の信奉者へ
     サン・フェリクス信徒集会と二元論教会―カタリ派教会秩序の構成
     大分裂―絶対的二元論派と穏健的二元論派

第5章 二元論主義への十字軍―二元論教団と正統教会

     公会議と十字軍―アルビジョア十字軍の快進撃と停滞
     抑圧と抵抗―カタリ派信徒と異端審問団の睨み合い
     モンセギュール陥落
     ローマとバルカン半島の異端―バルカン異端への教皇の敵意
     カタリ派の衰退―異端審問の仮借ない締めつけ
     異端教皇
     ボスニア教会とスクラヴォニア教会―ボスニアの二元論信徒
     静寂主義とボゴミール派―限りなく異端に近い正統思想とその衝撃
     異端とボスニアの政治―ボスニアにおける二元論宗教の行方
     バルカン二元論の運命―墓碑に現れた古代の二元論信仰

第6章 二元論伝説―ボゴミール派=カタリ派の世界観

     キリスト=ミカエルとサマエル=サタン―異端派の宇宙創生論
     善なる神と邪悪の神―ボゴミール=カタリ派が明かす世界の秘密
     ベツレヘムとカペナウム―ボゴミール派=カタリ派の聖書解釈

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 以上、目次を見ただけで、スケールの大きさがおわかりいただけよう。書かれているのは、ヨーロッパ、小アジア、中東といった地域における古代から中世に及ぶ宗教史なのだ。ついでに、日本語版への序文の冒頭部分を抜粋、ご紹介しておきたい。
 本書の原題となった『ヨーロッパの隠された伝統』とは、中世ヨーロッパで異端派が取り沙汰されるときに流通していたある見解を指す言葉である。それは、異端派自身がそう考えていたばかりできなく聖俗にわたるその敵手たちのあいだでも、当然のことと受けとめられていた。この見解によれば、ボゴミール派とカタリ派という中世ヨーロッパの二元論異端は、行きつくところ、古代末期からその時に至るまで「隠され」、秘密のうちに伝承されてきた、とある伝統に由来する。カトリック教会やオーソドックス教会に属する、二元論異端の敵手や迫害者たちは、おおかた、この「隠された」伝統を、アジアやヨーロッパのキリスト教の古代における敵、マニ教と見なすか、時には、古代のほかの異端諸派と関連づけて考えていた。が、その一方で、当の二元論異端者たちが説くところによれば、この伝統こそ、キリスト教揺籃期の使徒たちの「純粋な」キリスト教精神の直系の末裔なのであり、この使徒的伝統はやがて教会によって堕落させられたというのであった。このような訳で、あるコンテキストにおいては、この「隠された」伝統の復権は、一種の「秘められた歴史」とも考えられることができたので、乏しい、あるいは、敵意に満ちた史料やそれについての言及から、宗教的発展の抑圧された、あるいは、秘匿された底流を再構築する努力が払われてきたのである。〔以下略〕
 この方面のより徹底した、西洋のみならず東洋をも覆い尽くしたほどによりスケールの大きな、精緻を極めた研究者がブラヴァツキーだとわたしは思っているが、彼女の指針を連想させるような研究書に出合えるのは嬉しい。しかしこの著作も内容は盛り沢山で、読み終わるには時間がかかりそうだ。

 図書館から借りた本の中で、どうしても所有したい本が何冊か出てきた。この本はそのほしい本の候補となりそうだ。過去記事「考察…カタリ派における祈り」が中途半端なのだが、昨晩読みかけたこの本のことを先にメモをしておこうと思った次第。

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