友人とおしゃべり&戦略
大学時代の友人の一人にある用件で電話をした。その用件について話し合ったあとで、彼女が4年前から童話や絵本の創作を始めたことについて話した。
彼女は、創作を再開して初めての作品を、悪名高き自費出版系の出版社が主催する賞に応募し、うまくいいくるめられて絵本を出した。
そのことを前もって知っていれば止めたのに、とわたしは思ったが、あとの祭りだった。
そのときのことを改めて話した。
ソフトカバーの薄いパンフレットのような装丁で、500部作らされ、128万円だったという。1年間書店に並んだあと(本当に並んだかは不明。書店勤めの娘が、本当に書店に並んだかどうかを調べられるというので、調べて貰うことにした)、処分するか引きとるか訊かれ、引きとったという。大きなダンボール箱3つで、置き場がないそうだ。
その出版社は味をしめたのか、昨年も今年も声をかけてきたそうだ。関係を断ってしまわないと身ぐるみはがされるわよ、とわたしは警告したが、彼女は半ば中毒になったようで、フラフラと誘いに乗ってしまいそうになるそうだ。書き手をよい気分にさせる甘い言葉を使うのだろう。校正の手も全く入っていないのかと思ってしまったくらいのものだった(一応あったらしい)。
そもそもなぜ彼女が創作を再開したのか、わたしは不思議に思っていたので、訊いた。
彼女は学校事務の仕事をしているが、当時、子育てに悩みがあり、就職してから何でも相談してきた上司であり友人でもあった人物の死があり、また、生き甲斐とはなりえない仕事の物足りなさや子供と接する機会のある職場環境――といったことがあって、それらが混じり合って、彼女の創作意欲を刺激したらしかった。
彼女はわたしと同じ法学部卒だが、転職を考えたともいう。司法書士と行政書士の資格をとってそちらに鞍替えをするか、童話作家になるか、二者択一を考えたそうだ。
彼女は上のお子さんが大学4年、下が高校生で、教師である夫との夫婦仲は円満な環境にある。一戸建ての家があり、金銭的にはゆとりのある暮らしだそうで、子育ての悩みも今は一応の終息を見た由。わたしなどから見ると、安定した羨ましい環境と思えるが、それでも彼女は生き甲斐という点で、何かしら物足りなさがあるようだった。
わたしは、今の仕事をしながら創作を続けてはどうかとすすめた。尤も、同じ素人がいっても説得力に欠ける。いや、長く書いているのにプロにもなれない人間は、それ以下のおバカと看做されがちなのだ。勿論、芸術的な闘いを続けていると思ってくれる人など皆無。唯一それを信じてくれた自身からさえ見放されそうで、心細い限り……。
父夫婦からもたらされた件〔カテゴリー:父の問題参照〕から、法曹界にある幻滅を覚えた話も彼女にした。司法書士の試験となると、通るのがまず大変だし(その点は、わたしより勉強家だった彼女も承知している)、事務所を開くにあたっては地盤の問題なども出てくるだろう。
要するに、何かにチャレンジしたい気持ちが彼女にはあるのだろうとわたしは思った。長年の勤務が彼女に退屈を招くほどのしっかりとした安定感をもたらしたのだ。そうしたよさを知らないわたしの中では、逆に、ただ生き甲斐のみが屹立している。
どちらも、長年の努力で得られたもので、お話にある、いわば彼女は平穏な暮しが物足りなくなった田舎のネズミ。わたしは(現実には田舎暮らしだが、心理的には)創作の醍醐味というご馳走の味を知っているが、安定を知らない都会のネズミ。
彼女は、肩書きがほしいわけではない。宮沢賢治みたいに死後に認められるということだけでもいいが、本は出したい(なるべく安く、よい装丁で)……などと子供のようなことをいう。悪徳出版社のカモにうってつけの考えかただ。
彼女の創作活動には危うい感じがあるが、彼女が創作を再開したことについては、わたしは祝福したい。大学時代に彼女が書いた童話がわたしは好きで、以前、それを個人誌に掲載させて貰った。彼女の最良のものが出たよい作品だ。悪徳出版社から出た作品も、荒削りで説教臭いところはあるが、綺麗な調べが感じとれる。
彼女には本を出す金銭力があり、努力家でもあるので、童話作家になることも夢ではないだろう。わたしは、(ハードカバーで出すとなると安くはないだろうが)良心的と思われる、自費出版も手がけている児童書専門の出版社を教えた。
しかし、不思議なことに、悪徳出版社から自費出版する気にはなっても、わたしが教えたような出版社に話を持っていくことを彼女は躊躇する。敷居が高そう……面倒そう……と彼女は考えたようだった。
いっそ出版社を介さず、印刷屋さんにお願いして本を作ってもいいのではないかと思われたが、彼女にとっては、出版社から本を出すということに意味があるらしかった。
長い作品を書く力はまだ彼女にはないので、短い作品を募集していて、参加者全員にご褒美をくれるはずの某賞を一昨年だったか、彼女に教えていたが、彼女は昨年に続いて今年も応募し、いずれも落選したという。
「まともな賞では、そんなものよ。応募総数を考えて御覧なさい、落ちるほうが正常な事態だとわからない? 応募するたびに受賞できる、大勢の受賞者が出るなんて賞はね、それを餌に自費出版を持ちかける手段にしている悪徳出版社が主催する賞だけなのよ」とわたし。
ただ、悪かったことに、わたしが教えた賞はご褒美を出さなくなっていたようだ。受賞者の作品集が送られてきただけだったという。わたしは最近、賞から遠ざかっていて、情報が古びてしまっているようだ。
電話を切ったあとで、大学時代に書かれた彼女の作品を捜した。生原稿は昔の手紙の束のどこかにあるはずだったが、捜すのは大変なので、とりあえず、個人誌に掲載させて貰った作品のコピーを送ることにした。その作品は、彼女の創作の原点なのだ。自分で保管するのが筋だと思う。
わたしは『不思議な接着剤』が完成したら、可能であれば、この人と思っているある人に絵をつけて貰い(一旦まとまりかけた話が物別れに終わったが、何度占ってもタロットカードはコンビを組めると告げる。調子がよければ、描ける人だとはっきりした。時期を見、再度話をしてみて、無理であれば、挿し絵なしの文章だけで行くしかない)、彼女に教えた出版社を含む数軒の出版社に原稿を持ち込んでみたいと考えている。以下で、そのおさらいをしてみる。
- 賞応募と持ち込みの線で考えている出版社……K社(東京)。
サイトで個人的に発表した作品も受け付けるということだったが、これも古びた情報になってきたので再確認の必要がある。それに、わたしも現在ではサイトが増え、ホームページも持つようになったし(そこには載せないようにすべきか)。 - 持ち込みを考えている出版社……P社、K社、I社、R社(東京)、A社、S社(福岡)。
- 投稿を考えている出版社……F社(東京)。
F社は持ち込みを禁止し、郵送による投稿のみ受け付けている。
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