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2009年2月 7日 (土)

マーガレット・ミッチェルに題のヒントを与えた、ダウスンの詩をご紹介

 当ブログで、たまにですが、詩をご紹介してきました。毎日、その過去記事のどれかにアクセスがありまして、詩を愛する人は結構いらっしゃるのだな、と感じられ、嬉しく思っています。

 詩には、どんな人生にも、輝きと尊厳を与えてくれる類まれな力があると思われます。自分でつくらなくとも、ときどき気に入った詩を書き写したり、口ずさんだりして、記憶の宝石箱に仕舞っておくとよいですね。

 そこで、今日は、もととなっている小説だけでなく、映画を通じてもファンが多いと思われる名作『風と共に去りぬ(GONE WITH THE WIND) 』の著者マーガレット・ミッチェルに、題のヒントを与えたとされる詩――アーネスト・ダウスンのNON SUM QUALIS ERAM BONAE SUB REGNO CYNARAEを南條竹則氏による口語訳でご紹介したいと思います。

 原文の第三のスタンザに、確かに、gone with the wind (風と共に去りぬ。南条氏が、風とさすらい、と訳されている箇所)とありました。

我は良きシナラの支配を受けし頃の我にはあらず

きのう、ああ昨夜、女と私の唇の間に
ふと君の影がさした、シナラよ! 君の吐息が
接吻と唇の合間に、わが魂を覆った。
そして私は寂しさに沈み、昔の恋に胸ふたがれた。
 そうだ、私は寂しさに沈み、頭(こうべ)を垂れるのだった。
私は君を裏切らなかった。シナラよ、私なりに。

夜通し、女の温かい胸は、私の胸に圧(お)しあてられて鼓動を打った。
女は朝まで、この腕の中で、愛と眠りにくるまれていた。
金で買った紅(あか)い唇の接吻はたしかに甘かった。
けれど私は寂しさに沈み、昔の恋に胸ふたがれた。
 夜明けに目覚めて、灰色の空を見たときは。
私は君を裏切らなかった、シナラよ、私なりに。

私は多くを忘れ果てた、シナラよ! 風とさすらい、
遊び仲間と狂おしく薔薇(ばら)を、薔薇を投げ、踊っては、
(かえ)らぬ君の青ざめた百合(ゆり)を心から追いやった。
けれど、私は寂しさに沈み、昔の恋に胸ふたがれた。
 そうだ、踊りは長かったから、その間ずっとやるせなく。
私は君を裏切らなかった、シナラよ、私なりに。

もっと激しい音楽を、強い酒をと私は叫んだ。
だが宴(うたげ)が終わりを告げ、燈火(ともしび)が消え去れば、
その時こそ君の影はさしおりる、シナラよ、夜は君のもの。
そして私は寂しさに沈み、昔の恋に胸ふたがれる。
 そうだ、わが思う人の唇に飢えて。
私は君を裏切らなかった、シナラよ、私なりに。

南條竹則・編訳『アーネスト・ダウスン作品集』〔岩波文庫、2007年〕

当ブログにおける関連記事:昨日の夕飯はカフェで&コットンと『風と共に去りぬ』

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