同人雑誌に提出する作品について
次号までで休刊になる同人雑誌「H文学」の原稿締切が来月末。
ここにきて、まだぐずくずと例の舞台劇風の神秘主義的作品にするか、評論にするかで迷っている。
前者は受け入れて貰えそうになく、後者は今書きたくない。
そう思いつつ、こちらを考え、あちらを考えしながら、スパートをかけるときを狙っている。
前者の小説の舞台は見えていて、窓から木の枝が入り込むばかりだから、生者Aは2階に住んでいる。が、死者Bはその窓から入ってきたわけではない。
気づかれないと思っていて、勝手なことを心のなかでつぶやきながら、この世に残された滞在時間を使って、BはAの本棚に何があるのか見にきた。
だが、生者AにはBの心のなかのつぶやきが断片的に聴こえている。というのも、Aはときどき相手との距離の遠近とは関係なく、他人の心で紡がれる断片をキャッチすることがあり、心というのは、人が生きていようが死んでいようが性質が同じであるため、Bの心のつぶやきもキャッチしてしまったというわけだった。
Bは、本棚を見て、何だこんなものか、普通じゃないかと思う。そのつぶやきが、Aを怒らせる。Bのその現在のありようが、自分の観察と思想の正しさを立証しているではないかとAは思うのだ。こんなときまで、自分をこの世的鋳型にはめようとしているBを殺したいほど憎らしいと思うが、残念ながら相手は死んでいて、ここにいる……
今ふとこれを書きながら思ったが、死者を1人ではなく3人にするのもいいかもしれない。神秘主義、仏教、キリスト教に関心のあった3人が順番に出てくるのも面白い。が、そうなるとムード的にはトーンダウンを免れまい。いずれにしても……
死者を格調高く描く。思慮深さと人間臭さとが混じり合い、独特の魅力を放つような。この世の目録を夫々の立場、観点から読み尽くそうとした3人の人物(あるいはそれを1人に集約させたBという人物)。生きていた頃のBの目的は、多くの人々がそうであるように、あの世にではなくこの世にあったため、Aからすれば欠けた人間にも偽善者にも見えるが、むしろ特殊なのはAで、この世に生きている癖に目的はあの世にあるため、変った人物に見える。この世というフィルターを通してあの世を見ていた死者たちと、あの世のフィルターを通してこの世を見ているA。
○o。+..:*○o。+..:*○o。+..:*
この世に生きていながら、あの世の空気を常に思い出すこのAこそ変人で、Aをむしろデフォルメして描くこと。この世ではあの世のことがデフォルメされているように。なぜ、Aが後生大事にあの世の記憶の断片を大事にしているのかは謎のままに、その記憶の断片だけがときにキラリと宝石のような輝きを放つところは筆を尽くして描くように。
○o。+..:*○o。+..:*○o。+..:*
そして、Aの大事にしているあの世の記憶の断片だが、それはそれほど大事なものなのだろうか、とAが死者を見送ったあとでふと疑惑に捉えられるところを、この世の俗物そのものにユーモラスと哀愁を帯びて描く。人はじたばたしたっていずれ死ぬ生き物だし、あの世はあくまでその死んだ者たちのもので、死んだ彼らにとって、Aのあの世の記憶の断片(宝石)などはすぐに、あの世の石ころの一つにすぎないものとなるだろうから。
自分にしかわからないようなメモで、一体何を書こうとしているのかと呆れられそうだが、作品にすると、整って美しくなると思う。迷いながらも、こうした路線で短編は進めており、評論に関しても、アクセス数の多い『ノルウェイの森の薄気味の悪さ』〔当ブログ⇒Go! ホームページ⇒GO!〕 を土台にするつもりで、読書と考察をちんたらとではあるが、進めている。
ル・クレジオの集英社文庫版『海を見たことがなかった少年』を読んでいるところ。前掲のエッセーに、近年のノーベル文学賞受賞者であるオルハン・パムク、ドリス・レッシング、ル・クリジオに触れた一文を加えたい。
もし小説を「T文学」に掲載して貰えれば、入ったばかりの協会の文学賞にそのまま出せる。だが、K文学賞に応募するとなると、「T文学」にも協会にもどちらにも出せない。K文学賞はとれないから(断言)、応募するだけ無駄ともいえ、そうなると、ますます小説にするか評論にするかで迷う。
今月いっぱいは迷っていよう。来月に入ると、そういうわけにはいかない。
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