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2009年1月23日 (金)

その後Ⅱ

 父が起こしたのは、印紙代(申立手数料)だけで32万円以上かかるような高額裁判です。
何を書いているのかもわからないような訴状を無条件に受け入れ、呼び出しをかけてきた地裁……そうした仕組みに疑問がわきます。

 調停で、父たちのおかしさが浮き彫りになり、不成立ということになったとき、わたしは今後のために、こうした内容の調停だったということを一筆書いて貰えないか、書記官に頼んだのですけれど、それはできないというお話でした。

 こんなことを続けることで追い詰められるのは、誰よりも父たちですから、どこかで歯止めがかからないと大変なことになりかねないと気が気でなりません。

 本来であれば、生活には金銭的に困らないはずで、金銭感覚もノーマル、どちらかというと慎重な父でした。母が亡くなったあと、妹が嫁ぎ、父は独り暮らしになりましたが、わたしたち姉妹がさほど父のことを心配しなかったのは、生活者として信頼がおけたからでした。

 船員生活が長かったためか、一風変わったところはありましたが、料理を含めて家事もわたしなどより、よほどベテラン。社交的で、型破りなところと折り目正しいところが同居した人目を惹く人柄でしたけれど、シャイであり、結婚後のわたしたちとの交際にも気を遣いすぎるくらいでした。

 今の父は、様々な文書の改竄だの、パスポート偽造だのといった、わたしたちには身に覚えのないことを言い立て、法外な賠償額を突きつけてくる得体の知れない人物になってしまいましたが、これら全てをひっくるめて、家裁の看護師さんがおっしゃったような《物盗られ妄想》のふくらんだ形との印象を受けます。

 そしてそれは、普通に原因を探っても概ね無意味な、脳の疾患から来たものではないかと想像する他はありません。

 父夫婦は、悪党や不親切な人間ばかりに囲まれているという妄想の中で絆を堅くし、いわばロミオとジュリエットとなって暮らしています。それが幸せかどうか。どこまで、そのスタイルを貫けるのやら。

 母は、遺されたわたしたちの人間喜劇をあの世でどう思っているのだろう、とときどき考えます。

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