息子と電話で話す
息子の住む街では風邪が流行っているらしい。息子も風邪をひき、なかなか抜けないようだ。それ以上長引くようであれば、病院へ行って本当に風邪かどうか確かめて貰うようにいった。
夜間はもう結構冷え込むというのに、窓を開けたまま寝たりしていたらしい。暑いときでも、窓は極力閉めて寝るようにいっているのに……。真冬でも半袖で通す(外出時はさすがに、ジャンパーかウインドブレーカー、よそ行きのときにはコートを羽織るようだが)癖がついているので、寒暖の差があっても衣類の調節などは思いつきもしないのだろう。
汗をかくと湿疹が出るので、半袖や薄着が習慣づいてしまったようだ。でも、それも程度もので、風邪を予防するくらいの衣類は身につけてほしいと思う。
来春の卒業、引っ越しのほうへ頭は向いているようだ。
引っ越し先に持って行けようと行けまいと、家財道具(学生時代にいくらかアパート暮らしをした娘から引継がれたものもある)は、リサイクルショップに引きとりに来て貰うか粗大ゴミに出すかして処分したほうがいいのでは――と、アドバイスした。
配属が決まる前に東京で研修があるし、配属後の引っ越し先が東京になるのか、大阪になるのかさえ、今の時点ではわからない。
息子はどちらでもいいといいながらも、内心では東京を希望しているのだが、それは土地を選んでのことではなくて、部署に関する希望によるものらしい。
というのも、息子が今大学院でやっているような分子シミュレーションは、東京でしかやっていないからなのだった。
おそらく、計算科学という部門に行けることはほぼ間違いないだろうが、その中にも息子の希望する部署の他に構造解析はじめ複数の部署があり、分子シミュレーション以外は東京と大阪どちらでもやっているというのだ。
だから、仮に引っ越し先が東京になるとしても、分子シミュレーションに行けたということにはならないようだが、引っ越し先が大阪だとすると、分子シミュレーション以外の部署に配属されたということだといえよう。
息子は、他の部署に配属されるとなると、大学でいえば、同じ理学部であっても、理論化学から生物に行かされるような違和感を覚えるだろうという。
それでも、それは贅沢な悩みといえば贅沢な悩みだ。
大企業の場合、どの部門に行かされるのかでさえ、わからないところも多いようではないか。息子は就活中にそれを思い知った。研究室勤務になるのか、工場の監督に就くことになるのか、営業になるのかが全くわからないというのは大変なことだ。
大変なことだけれど、わたしや娘のように4年生大学の文系を卒業した場合、そもそも教養的知識が霞を纏うように身についているだけで、実用的な技能は身についていないことが多いため、どこに就職を希望していいのかさえ、わからなかったりする。どこにも違和感を覚えたりする。
尤も、わたしのような作家志望となると、特殊すぎる希望であるため、ほとんど馬鹿みたいであるといえよう。実際、天の星を松葉箒で掻き落とせると思い込んでいたものでね……。
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