創作に関すること/入院前に読んだブッツァーティ『七階』
左サイドバーにあるカテゴリー〔創作関連(賞応募、同人誌etc)〕をご参照願いたいが、短編小説の計画があり、8月いっぱいに何とか完成させて、今年もK文学賞に応募したいと思っていた。
が、8月12~9月6日まで入院していたため、応募はおじゃんとなった。
まあいい。応募にこぎつけられるかどうかは、微妙なところだったから。この作品はいずれ完成させたい。
とりあえずは、同人雑誌用に、村上春樹とオルハン・パムクを比較したエッセーを仕上げたい。パムクに関しては、『わたしの名は紅』の大まかな感想は書いたものがあり(カテゴリー〔オルハン・パムク〕参照)、現在、『雪』を読んでいる。
入院前に読んだディーノ・ブッツァーティの代表傑作選『神を見た犬』(関口英子訳、光文社)の中に収められていた『七階』という作品には、ぞっとさせられた。病院を舞台とした幻想風の作品だ。
わたしの場合、深刻な入院というわけではなく、頭蓋骨にできた腫瘤の生検を含む検査入院にすぎなかったのだが、主人公だってどちらかというとお気楽な気分で入院患者となったわけだから、物語の淀みのない展開とムードとに、よけいに凄味があったというわけだ。
主人公の入院した病院は特異なシステムをとっていて、重い患者ほど下の階へ収容される決まりとなっていた。主人公はいわばお客気分で最上階の入院患者となる。
ところが、何やかやと大した理由もなく、ちょっとした都合(と見せかけられて)、どんどん下の階へと移されていくのだった。主人公はそうして、エスカレーター式に最下階へと到達……すなわち死へと赴くことになる。
この世に生きている限りは、いつかは自分も主人公のようなことになるのだ……と思わされる。そればかりか、小説の中の場景描写はまことに映像的で、その光景には既視感があると錯覚させられるほどだ。
わたしの入院した病院では、4階のがん病棟と、どの階の病棟にもあるスタッフステーション近くの個室が入院患者たちの何とはなしの畏怖の対象だった。
ああ、病院から無事に帰れてよかった。だが、次の入院、そのまた次の入院ではどうなりますかね――と作者は警告していよう。
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