ノート1-1
新しい小説について、考えていた。そのメモから、明かしていい範囲内でここに抜書きしてみる。
- 登場人物(生者)Aに関するメモ
- 登場人物(死者)Bに関するメモ
これまでにわたし(=作者)が交わった、思想・文学畑の人々全てを総合したような人物像にしたい(不思議と共通性がある。わたしが似たタイプに惹かれやすいということだろうか。わたしにあこがれと喜びと思想的手応え、及び抑圧とコンプレックスをもたらす。よくも悪くも権力の追従者、小役人タイプ、中庸を心がけており、社会の潤滑油の役割を担いやすい人々といえるが、少なくとも、書きたい衝動を起こさせるだけの魅力を秘めた人々であることは確かだ。そう、書きたくてたまらないから、こうして書こうとしている。その魅力の一端は大衆性ということだろうか。そこにわたしは愛おしさと限界を感じさせられてきた。Bは、大衆という抽象概念の中から最も良質、また危険な部分を結晶させたような人物といってよい。この短編小説は、大衆への捧げ物となるだろう――と大仰に言い切ってしまおう――こんなことをいうと、まるで自分が大衆の1人ではないみたいで滑稽だが)。
Bは男性であっても女性であってもいいが、男性であるほうがよりテーマの追究がしやすいだろう。
外的イメージとしてはフランソワ・モーリアックの日本版。日本人という田舎物であることに対するコンプレックス。慇懃さ。ステイタス。が、Bが目指した方向はモーリアックとは別の方角だった。
Bはホロスコープに、木星と冥王星の合を持つ。このアスペクトの解説を、松村潔著『完全マスター西洋占星術』(説話社、2004年)から引用すると、木星と冥王星の「合は、およそ12年から13年に1度訪れますが、そのたびに宗教的あるいは政治的な権力を極めるような人材なり、組織なりが生まれてきます。それは『キングメーカー』と言われるアスペクトです。個人の天体にこのアスペクトがあれば、その人は何らかの分野で力を得ることになりやすいでしょう。/こころの中の善なるイメージである木星を信じ、自分のすることは必ず正しいという確信を抱いていますが、大げさで傲慢な性質も含んでいます。社会的に地位が高くない状況であれば、権力を否定する態度にもなり得ますが、ひとたび何らかのステイタスを獲得すれば、権力主義へと態度は急変するでしょう」
Bは仏留学の経験があり、カトリック教徒であり、職業的には編集者を経て作家だった。彼の二重思想、二重生活。同じカトリック教徒であっても、自分の感じ方に正直だった遠藤周作、率直だったモーリアックなどの対極に位置するタイプ。Aにとって、こうしたことが明らかとなったのはBが亡くなったあとのことだった。
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