友人の詩をご紹介~行織沢子小詩集・作品3|現身(うつそみ)
大学時代からの友人(文芸部の先輩)の詩を、ご紹介します。友人は行織沢子というペンネームを一貫して用いてきましたが、福岡大学文芸部の機関誌に作品を発表した当時もそうでした。
今回ご紹介する行織沢子の詩4編は、詩部門機関誌「シャバ」及び掲載の主眼を小説においた「福大文学」に発表されたものです。
INDEX
作品1|あこがれ ・・・・・・ シャバ13号、1975年
作品2|盲人 ・・・・・・・ シャバ13号、1975年
作品3|現身(うつそみ) ・・・・・・ 福大文学34号、1976年
作品4|赦し ・・・・・・ シャバ14号、1977年
現身(うつそみ)
意しき いぜんに森羅万象を
察知する
そんなわたしにわたしは気づかないことば の発生するとおい彼方を
うごめく 具象(かたち)をもたないちきゅうがある
そこにあって
わたしとはきずかぬわたしが
いげんじつのことばでもって
意しきするよりはやく察知して
のちにおちてきたところのそれら
ことばの〈ふしぎなさわぎ〉と〈つぶやき〉それらでもって
わたしである と想定しつづけ
にんしきしてしまったところの自己は
かがみのおもてにだけ 構想せよ
ひとり てんしなら
あなたは道化やくしゃ
であるというざっくばらんな堕落がある
人称のうちそとでありふれた
客体化をきざみながら
あなたもいつしか死者である
ことばのうまれるとおい彼方で蠢く
具象(かたち)をもたないちきゅうの空で
ひとり体現者であり死者であるもしも ひとりてんしなら
あなたは光であったかもしれぬ
ならば
影のみがわたしにふさわしかろう
そんなさんねんかんがわたしにあった
とおい いちにちのように苦しげに
眼を閉じたままで
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