児童文学作品『不思議な接着剤』ノートから
現在、ジュゲムブログ「マダムNの児童文学作品」では、『不思議な接着剤』という長編童話を連載中です。
お話は大体できているものの、創作と同時進行の連載ですので、なかなか先に進まないこともあります。
というのも、水が流れるように自然に話を進行させることの難しさがあるからです そんな風に話を進行させようとすることには苦労もありますが、楽しさもあります。
そうしたことの一端を、たまにはお見せしたいので、忍者ブログ『マダムNの創作ノート』から、このところの『不思議な接着剤』のためのノートをご紹介します。興味がおありのかたは覗いてみてくださいね。
水槽に見入る翔太 note6
ネオンテトラ、ナマズの仲間コリドラス。水槽に両のてのひらをくっつけて、水槽の中の世界に見入る翔太。
そのあいだ紘平は、瞳がシフォンケーキを型から出すのを手伝う。瞳は、お母さんから、そういいつかったのだ。その作業中、彼は瞳に、不思議な接着剤のことを、また弟翔太に仕出かしてしまった事件について、打ち明ける。
瞳は、陽気で頭の回転の速い、思い遣り深くもある少女なので、どんな反応をするかだ。
説明書によれば、接着剤の使用は6回となっている。既に紘平は3回使用している。これまでに、次のようなものをくっつけた。
①肉まんと紘平の口
②ピアノ協奏曲の音色と弟翔太の口
③今日としあさって紘平と瞳の話し合いでは、残る接着剤使用の内訳は次のようなものとなる。
④翔太のピアノの音色をした泣き声を、元の泣き声に戻すことに使うのに1回分。
⑤遊びの切っ掛けを作るのに1回分。具体的には、電器店の倉庫の中の迷路の先に巨大鍾乳洞をくっつける。
⑥遊びを締めくくるのに1回分。具体的には、壁を通り抜けて延びた鍾乳洞を消滅させるために、壁に開いた穴を接着剤で塞ぐ。つまり開いた壁の端と端をくっつけて、壁を元通りに再生することで、接着剤で創り出した別の世界を切り離す。ところがだ。
3人の冒険は無事に終るものの、壁をくっつけることはできていない。スピカの白い猫(中世の猫。いわば中世のエッセンス)が、帰宅しようとする紘平たちにくっついてきてしまったから。また、翔太の泣き声も取り戻せていない。さら予想外だったことには、紘平が接着剤で消した2日間のために、元いた世界は混乱していた。これら全てを解決するために、接着剤は最低3回分は必要なのだが、⑤に使用したため、残っているのは2回分だけだ。
紘平と瞳は、接着剤以来の時間をなかったことにするために、これまでのことを紘平が夜見る夢の世界にくっつけることにする。これで1回分。残る1回分は、現実の世界で叶うことになる。病気のおばあさんを慰めるために使うのだ。
シフォンケーキで思いついた恐竜の正体 note7
連載43のシフォンケーキが出てくるくだりを書いていて思いついたのだが、恐竜の正体は、シフォンだったことにしよう。
翔太のピアノの音になった泣き声が鍾乳洞の天井にぶつかり、その音の玉がネオンテトラに似た小鳥とか、コリドラスにそっくりの小鳥とかに変わる。
コリドラスそっくりの沢山の小鳥が、恐竜の胴体をつつくと、恐竜は出来損なったシフォンのようにへしゃげ、縮むのだ。
ということは、その伏線として、シフォンケーキは(瞳には気の毒だが)失敗作ということにしなければならない。
それで型から出す彼女の奮闘もむなしく、ケーキは崩れ、3人の子どもたちはそれをテレビを観ながらと食べる。
白い猫 note8
救急病院にいた白ネコ、カレンダーの絵の白ネコ。
そして、白ネコは生贄として鍾乳洞に囚われの身となっている乙女が連れてきたペットで、その白ネコが3人の子供たちを少女のもとへ導く。でなければ、巨大鍾乳洞の中で、3人は乙女に出会うことはなかっただろう。
瞳の両親のこと note9
主人公紘平の幼馴染である瞳は電器店の娘であるが、彼女の両親は紘平の父親と関係を持たせたい。すなわち彼らはアルケミー株式会社と関わりがあるというわけだ。
尤も、こうした裏事情(?)は、現在執筆中の第1作目では出てこない。
アルケミー株式会社と関係のある人間ということになると、瞳の両親は錬金術師ということになる。だとすれば、瞳は錬金術師の娘で、鍾乳洞の中に入り込んでいる中世風の世界でいずれ彼女が紘平兄弟と共に出遇うことになるスピカの末裔ともいえる。
紘平とその弟は、錬金術師の父親と一般人である母親との間に生まれた、いわばハーフと考えてよい。
第1作目では、全ては夢だったということで終るが、どうしてどうして。そこで話が終るわけがない。
登場人物たちに、言葉の壁をどう乗り越えさせるか? note10
中世の乙女スピカと紘平たち一行との言葉の壁の問題。
テレパシーしかないかな。スピカが錬金術師の娘ということが幸いする。
体験のないことではないので、子供だましの方法というわけではない。テレパシーの極意(?)は既に児童文学作品『魔王』で書いた。
鍾乳洞について note11
秋芳洞は「温度は四季を通じて17℃で一定し、夏涼しく冬は温かい」という。外国にある鍾乳洞に関する記事だったか、12℃で一定というのもあった。鍾乳洞の中は、このようなものらしい。一定していて、過ごしやすいらしいのだ。原始人が暮したり、宗教的な場として使われていたりもした過去があるわけだ。
昔、夏行ったときに中がひんやりとしていたので、冬はかなり冷え込むのかと思っていたが、一定しているのか。これは都合がよい。子供たちをあまりに過酷な状況下に置くわけにはいかないからだ。
湿度は高いようだ。内部の環境は、喘息患者にはどうなのだろう。喘息の子供を鍾乳洞に連れて行ったというブログの記事に、その子が階段で発作を起こしたとあったから、起きることはあるのだろう。コウモリの糞など、あるだろうから、それで喘息が誘発されることもあるに違いない(それに、スピカの白い猫もいる)。
紘平は秋芳洞に行ったことがあり、そのとき土産店で恐竜ティラノサウルスの人形を買った(……と、どなたかのブログにあったのを拝借)。
日本あるいは海外の鍾乳洞にお出かけになった方々の記事を読むと、鍾乳洞と化石と恐竜は結びつきやすいらしく、鍾乳洞と化石発掘体験と恐竜センターとがパックになったツアーは珍しくないようだ。
紘平一行の冒険には、鍾乳洞内の湖に潜む恐竜との闘いが待っているのだから、イメージ的な結びつきは重要だ。この冒険は、紘平の異次元体験とも夢の中の出来事ともつかない描きかたをしなければならない。
まあ神秘主義者のわたしにとっては、両者は別のものではないけれど。。。
世界一のマンモスケーブ、ヨーロッパ一のポストイナ鍾乳洞など調べる。
失敗作のシフォンケーキを食べ、ココアを飲む間、子供たちにテレピを観せることにしよう。そこに、鍾乳洞が映し出されるというわけだ。
中世のイメージをくっつけるとしたら、ポストイナか。そこに、紘平の行ったことのある秋芳洞のイメージが混じる。瞳は行ったことがなく、行きたいという。そこから、倉庫の中の通路の先に鍾乳洞をくっつける動機が招かれるというのは、どうだろう。
冒険へ note12
子供たちがおやつを食べながら見るテレビには、次のような順序で、映像が流れる。
中世風の街並み⇒鍾乳洞(スロベニアのポストイナ鍾乳洞)⇒洞窟城(ポストイナ郊外ブコヴィエ集落にある洞窟城)⇒洞窟城の内部⇒再現された司祭の部屋⇒拷問の展示物
テレビ番組はここで終る。スロベニア紀行の一部分を子供たちは見たということにしよう。
鍾乳洞の映像は、子供たちの興奮をそそる。翔太はコウモリに興味を持つ。後にそのコウモリの糞で、翔太は痛い目に遭う(喘息の発作)のだが。
紘平は、秋芳洞に行ったときの話をする。そのとき翔太も一緒だったのだが、今より幼かった翔太はそのとき眠っていて、父親に抱かれていた。紘平は、土産店で、ティラノサウルスの人形を買ったことを思い出し、その話もする。工作の宿題で恐竜を作りかけであることも、彼は当然思い出すが、瞳に対するプライドから、下手な工作の話はしない。
瞳は理系タイプの女の子で(なにせ、将来、女医さんになったポニーテールのマチコちゃんがモデルなのだから)、鍾乳洞に並々ならぬ好奇心を募らせる。
どちらかというと、彼女の誘導で、彼らの冒険は始まるのだ。彼女は以前のnoteで書いたように、いわば錬金術師の末裔なのだから、当然といえば当然の展開といえる。
白い猫を忘れないこと。
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