実に楽しかった、二夜連続ドラマスペシャル『のだめカンタービレinヨーロッパ』
ドラマスペシャル『のだめカンタービレinヨーロッパ』を楽しんだ。
連続ドラマのほうは、最初のほうのドタバタ劇的描きかたに辟易して観なくなっていた。続けて観ていればよかった、とちょっと残念に思った。
それで、スペシャルに関した感想しかいえないが、わたしは漫画とは切り離して、ドラマを別物として味わった。
とはいえ、漫画に単調さを感じ出していただけに、ドラマにおけるのだめを演じる上野樹里、千秋を演ずる玉木宏の熱演ぶりが好ましく感じられ、乗りすぎかと思える野暮ったい面も微笑ましく観ることができたといえる。
いわば、駄菓子屋に行った子供時代のような楽しみかたをしたのだった。あるいは、仮装行列を見るような――。
随所に名曲の華の部分がふんだんに使われていた。それは、空間に漂う羽や薔薇の花、こぼれる玉といった視覚の助けを借りた強調のされかたで登場させられていたり、あるいはごくさり気ないバックミュージックとして挿入されていたり、と音の万華鏡のような世界を楽しませてくれた。
本来、名曲といっても、全体を通して聴くことは楽しいばかりではない。能楽の鑑賞と同じで、華の部分を除いては――曲にもよるが――案外退屈だったりもする。
それが、美味しいところばかりが大テーブルに並べられているの図――なのだから、堪えられない。メイン料理ばかりを食べて食傷しようがどうしようが、正月にはこんな楽しみかたは似つかわしい。
芸術上の煩悶や恋愛のせつなさが短時間で解決……主人公たちの凝縮された苦悩が、打ち上げ花火のように炸裂して暗い天空を彩るのを見るのは、正月ならではの爽快感、開放感だった。
それは、これからの長い、日常という耐え難い単調さの中に多くは不快な刺激のみを伴って大波小波あるに違いない一年を粛々と生き抜くエネルギーとなってくれるに違いない。
ひとつ、やられたと思ったのは、先に書いた、音が玉となって空間にこぼれる場面。同じような描きかたを今書いている児童文学作品の中で行っていたわたしは、ちょっとがっくりきた。
まあでも、音から玉を連想することは別に珍しいことではないのだろう。
わたしの描く音の玉は、鍾乳洞の天井に当たって小鳥になる定めの玉だ。これも、ありそうな発想ではあるけれど、自分のイメージするところに忠実に描いてみたいと考えている。
話が横道に逸れてしまったが、決して皮肉な意味でではなく、まことに健康的なドラマで、よかったと思う。
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