十五夜に寄せて
毎日まだまだ暑くて、気分は夏なので、うっかりしてしまうところでしたが、今宵は十五夜ではありませんか。
しっかり月を見なければ。。。空は白っぽいのですが、果たして綺麗に見えるでしょうか。
陰暦8月15日、中秋の月――一年中でこの夜の月が一番美しいとされ、俳句では、十五夜、名月、明月、望月、満月、今日の月、月今宵、芋名月ともいわれます。
月といえば、連想されるのは、物語のかぐや姫。以下は、『竹取物語 伊勢物語 大和物語 平中物語 日本古典文学全集8』(小学館、1972年)からの抜粋です。
この児のかたちのきよらなること世になく、屋の内は暗き所なく光満ちたり。翁、心悪しく苦しき時も、この子を見れば苦しきこともやみぬ。腹立たしきこともなぐさみけり。
わたしなどには、この場面はオーラを表現したものだとしか思えませんが、何か、かぐや姫の高貴さがじかに伝わってくるような描写だと思います。
かぐや姫が月に帰ろうとする前に、帝に宛ててしたためた歌がまたいいですね。こんな歌です。
今はとて天の羽衣着るをりぞ君をあはれと思ひいでける。
そして、天の羽衣を着せられたかぐや姫は、この世の思い煩いいっさいを忘れてしまいます。その場面は、こう描写されています。
(略)ふと天の羽衣うち着せたてまつれば、翁を、いとほし、かなしと思しつることも失せぬ。この衣着つる人は、物思ひなくなりにければ、車に乗りて、百人ばかり天人具して、のぼりぬ。
わたしは、昔、母が亡くなったときに、静謐となったその面を見て、思わずこの場面を思い出しました。
死に顔には、そのような深々とした忘却を想わせる静けさと威厳がありますね。
尤も、神秘主義観点からすれば、死んだばかりの人は必ずしも思い煩いいっさいが失せるというわけではないようですし、生まれたばかりの赤ん坊の顔が刻々と変化するように、死に顔もまた刻々と変化するものですが……。
わたしには、かぐや姫は、人間なら誰にも備わっているはずの真心をシンボライズしたもののように想えるのです。神智学用語でいえばブッディ・マナス(高級自我)ですね。
月に対するわたしの思いには、結構深いものがあります。というのも、幼い頃、電話交換手をしていた母が当直でいない夜は、窓から差し込んでくる月の光がお母さん代わりだったからです。
ですから、わたしの作品には、どこかしらに月が顔を出してしまうほどです。その最たるものといえるエッセーはこちらです。
つい、はしたなく、自己宣伝してしまいましたが、『かぐや姫』はどんな人物によって、そして、どんな動機で書かれたのでしょうか。謎であるところがまたいいですよね。
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