創作ノート②
人間とは、何て相対的な生き物なのだろう。関わる人間によって、本当に変る。いや、著しく変る人間がいる、といったほうがいいだろう。
著しく変るタイプの相手と暮らしている者にとって、相手はいわば粘土であり、生活はスリリングな遊びの場となる。
そこへ他の強力な影響力が侵入してきて、我が物顔でのさばったとしたら……。わたしは世間でよくあるこんな出来事が、こんなものだとは知らなかったので驚いた。
その驚きのさなかに、もっと深く物事を考えようとしたが、できなかった。今それをしようとしているのだが……。
何か深遠なるものの呼気に触れた気がして、が、それをうまく掴むことができない。
大小の波がありながらも慣性の法則のように続いていく生活。それが転覆させられた気がするのは、大きなハプニングが起きたときだ。台風とか母の死とか……。
だが、今から小説に採りあげようとしているタイプのハプニングは、そのどれにも似ていない。台風のような圧倒的な潔さはない。母の死のような苦痛に満ちたしめやかさもない。全てが騒々しく、荒々しくて、厚かましく、がつがつしていた。
活気に満ち、貪欲で、全てを嘗め尽くそうとしていた。火事のようにというよりは、病原菌のようにといったほうがいいだろう。
ひとり危険を感じながら、家の中のあれこれを、物たちを眺めていると、全てがかりそめの存在のように想えた。
すると、このわたしまでも、かなりの部分が、かりそめの存在となってしまった。こんなことは、自分が死ぬときにしか訪れないと思っていた。いや、死ぬときですら訪れないと思っていた。想像すらしたことがなかったのだ。
現在の自分を、次の瞬間の自分へとつないでいる輪がなくなってバラバラとなった感じ。その輪は何なのか。いや、輪などは最初からなくて、深淵が、闇があっただけなのかもしれない。幻想で、自分と自分をつないでいただけだったのかもしれない。
そして、何か深遠なるものの呼気に触れた。砂塵のようになったわたしが大気に拡散していったような感じを覚えた瞬間があった。
これをどう描けばいいのだろう。主人公は、わたしとは異なる性質と脳を持っていて、わたしのようには考えない。主人公に考えさせたい。主人公はわたしより現実的で、物事を観察することに耐久力がある。
この創作ノートは自分にだけわかればいいという意図で書いているので、訪問者には申し訳ないと思う。
できれば、明日までに15枚書きたい。朝の食卓のシーンから、とってきたばかりのクリーニングの袋をあけるところぐらいまでは。その間に、主人公の認識のもつれを描きつくさなくてはならない。主人公を切断し、バラバラにしてしまう、致命的で、何でもないような出来事を効果的に数珠つなぎにするのだ。
その意外性が数珠つなぎになるごとに、彼女のほうはバラバラになっていく。ある意味では、一番面白い部分となるだろう。全く、ワクワクする。
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