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2007年7月28日 (土)

同人誌提出作品~俳句「回転木馬」

 同人誌に俳句を提出すると決めたまではよかったものの、何せ我流俳句、一旦検討し出すと頭が痛くなってきます。

 そんなわたしに励ましの言葉をくださったかたがあり、ブログをしていてよかったと切に思いました。それで、冷静な頭に戻り、これまでつくった中から選択したのが次の25句です。


 回転木馬


つくねんとぼた山のあり春の雨

垂れ込めて花菜のひかり浮かびたる

勝鬨(かちどき)の面の艶なる武者人形

鯉のぼり挑むがごとく泳ぎをり

神経の細さ似る子よ夏帽子

木のぼりの娘(こ)落ちて泣いて夏は果つ

炊き出しの意気極まらば山車近し

神輿待ち野宴なれば土匂ひ

一念にもがいて駆くる運動会

こゑの中ほろところんで運動会

まな板や飛魚飛びし海の果て

日盛りの子となり初めし産湯かな

秋茄子の黒く照り合ひ列なせり

秋の蚊の触れては触るる壁づたひ

台風圏燭のひかりに家族の手

国東の潮の香れる葡萄園

秋汐に山すそぬれて輝けり

山嶺を数へし先に月りんと

大比売(ひめ)の山あり月は黄を強め

宇佐の月うさぎ半身くつきりと

貴婦人の衣装の如き百合活けぬ

大輪の白は深んで百合豪奢

見遣るたび未知の白なり百合の花

少年にゆかた短し宿の春

屋形船泊(は)つる冬川朝の目に


 この中で、当ブログ未公開だった句は下からの2句です。この2句は昔つくった次の10句の中から採ったものです。


 日田温泉 十句

ゆあみして父母(ちちはは)と酌む夫(つま)の春
かん酒に姑(はは)茜さし三隈川
少年にゆかた短し宿の春
ゲヱム待ち少女ゆざめの宿は深(ふ)く
宿に寝て舅(ちち)のしづかさ水仙花
また覚めて初夢分かつ湯の火照り
初泣きの児童矜持は大きかり
屋形船泊(は)つる冬川朝の目に
枯山の社(やしろ)の途を子ら駆けぬ
せせらぎの輝くを見し三日かな


「少年にゆかた短し宿の春」という句は夫方の甥をよんだものでしたが、思春期に入るまえの少年独特の危うさ、みずみずしさを表現したいと思いました。気に入っていた句でしたので、なんとか入れたいと考えました。

 他に、当ブログ未公開の句で一応候補に挙げたのは、次の諸句でした。


髪洗ふ瞑目のとき過ぎる相
初空に同じ足音朝刊来
授かりしものを孕まん寒卵
姑嫁たがへてむかふ初鏡
大宰府は底冷えの町久女の忌
足のうら冷たき真夜や水仙花
天からの贈りものなる春の雪
痴れ言の父の面影梅雨深く


 最後に挙げた句は、ブログ公開済みの「痴れ言の父の面影月見草」を改作したものですが、個人関係が露出しすぎている気がして採りませんでした。そうした句、感情が出た句、卓上句は姿を消しました。

 個人的には、ブログ未公開だった「叱りつつまた鬼女と化し大西日」なんてのも面白いと思いましたが、激しすぎて他の句との均衡を破ると感じ、候補にも挙げませんでした。

 それから、これは戦略としてですが、百合の句ばかり集めたものも一緒に送って、いずれかを同人誌主幹に選んでいただくことにしました。好みに添わないと落とされ、全然掲載されないことになるので、第二希望まで送る癖がついてしまいました。

 百合の句は出来にバラつきがありますが、テーマが一貫しているので、そちらを採られる可能性もあるかと思います。百合の句には他に「除夜の鐘鳴つて白百合開きけり」などという句もあり、実際に除夜の鐘が鳴り終わる頃に開きかけたのでしたが、作為的に感じられるのが皮肉です。季重なりですしね。


 百合の花


ふつと閉じ四方指したる百合若き

咲きそめて香気清(す)みさす小百合かな

百合の花ほのひらく度かほりきぬ

百合なれば莟の全てひらきけり

奥の力(りき)真白に放つて百合ひらく

花がめに降りハツハツと百合咲きぬ

青やかに蘂を含める百合白く

白百合は花粉こぼして精気尽き

枯るるまで高く香りし百合の花

丘陵に白く浮かぶや百合の群れ

相眺めて百合の名知るやカサブランカ

貴婦人の衣装の如き百合活けぬ

大輪の白は深んで百合豪奢

見遣るたび未知の白なり百合の花

わが魂(たま)の谷あひの色百合白き

百合の花見果てぬ夢の深まりて


 近頃では、カサブランカは見かけなくなりました。カサブランカに似ているけれど、頭が垂れていない別の名の百合をよく見かけます。名は何でしたっけ?

  わたしは頭を垂れている百合のほうが好みです。花屋さんに鉄砲百合が出ていたので、新しいいい句が次々に出来ることを期待し、2本買ってきましたが、残念なことにこれを書いている今、まだ莟のままです。

 咲くのもそろそろかと思って、楽しみに見ているのですが……。全部で8つある莟のうち、一つが卵でも孕んだみたいにふくらみ、先のほうがほのかに割れてきました。

 同人誌に提出が終れば、次は短編小説が待っています。すぐにとりかからなくては、来月中に完成できなくなるでしょう。夏バテなんていっていられません。既に食欲は全然ありませんが、体調が崩れないことを祈るばかりです。父の件もあることですし、大忙しの夏になりそう。

 ご訪問くださったあなた様もお忙しいことでしょうが、ご自愛くださいね。楽しい夏をお過ごしください。

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