ひとりごと(父の問題 その二)
老いるということは、哀しい。若いときの拘りや問題が、老年になって体も脳も弱った頃に一気に表面化したりするようだ。
父の家系にも、母の家系にも、わたしが知る限り、ボケておかしくなった人は記憶にないが、わたしが知らないだけかもしれない。
それに昔となると、今より寿命も短かかったから、ボケる前に亡くなっていたのかもしれない。
ボケなのか、若い人もなる類の精神異常なのか、いずれにしても現在の父がまともな父とは思えない。あれで正常といわれるとなると、かえって途方に暮れるだろう。いや、異常といわれても途方に暮れるだろうから、どちらにせよ、途方に暮れることになるのだ。
だが、10年以上ずっとあった心配、どうしていいかわからなかった問題にある光が当てられることは間違いない。
父は財産面で不安に陥っているようだが、これはボケた人によく家人がお金をとったと訴えることがあるのと同類のケースではないかと想像する。
船員年金は父たちが暮らしていくには充分と思われるから、困窮しているとは思えないのだ。ボケて金銭感覚に異常を来たし、締まり屋だった父が浪費家になったというなら話は別だが。
夢占いではしばしば、お金は愛情と解釈される。父は半分以上夢(妄想)の世界に生きているともいえるから、狂ったように愛情を求めているとも考えられる。いずれにせよ、その迫力たるや……。
退職して船を降りた父は、当時未婚で小さな商事会社に勤めていた妹と2年ほど暮らしていた。妹の家は実家から近いということもあるが、父がそこへしばしば言いがかりをつけて出現するというのも、父が妹を一番頼りにしているというあかしなのではないだろうか。
ただ父と妹の間には、ここには書けないある問題が潜んでいる。妹はそれを過去のこととしてしまったのかどうか。わたしはとてもそうすることはできないし、わたしが妹であれば、献身的になぞなれないだろう。
実際、わたしは心のどこかで、父がああなったことは自業自得だと思っているのだ。
だからこそ、わたしは父を正気に返らせて、人間としての自覚を問いたい。正常だった父に、わたしはそれができなかった。それをすれば全ては破滅、とも思われたから。
が今となっては、そのほうがよかったのだろうか。
ギリシア悲劇では、父と子の深刻な問題が描かれる。その何という深み……。
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