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2007年6月25日 (月)

美空ひばりに釘づけ

BS2で、美空ひばり生誕70年記念番組を昨日からやっていて、テレビに釘づけ。81年に収録された「ひるのプレゼント」を観ていました。

わたしはひばりの着物姿が好きなのですが、歌うときの凜とした艶冶な美しさといったらありませんね。
他の女性演歌歌手と比較してみればわかりますが、彼女は激しい手の振りをするにも拘わらず袖口がいつも綺麗です。
乱れた時は、さり気なく腕を落として整えています。着物の袖口から、見苦しく腕が露出することのない見事さ!
たまにちらりと見えるのが、幻影のような艶っぽさです。
マイクには白いハンカチが巻かれているのが、常です。

彼女からは、日本の伝統芸能の薫りがします。華奢な体で、それまでの日本文化の集大成を果たしていたようにすら思われるほどです。
彼女が亡くなったことで、戦前と戦後をつなぐ貴重なリンクが消えたような喪失感があります。

とはいえ、わたしがひばりに目覚めたのは亡くなってからでした。
物心ついて以来、歌謡界の女王としてあまりにも不動の存在で、その強烈なパワーに子供のわたしはたじたじとなったというか、食傷していたというか、消極的関心しか抱いていなかったというのが正直なところでした。
そのよさを本当にわかるには、若すぎたのかもしれません。
彼女の歌には様々な境遇にある人間や人生の諸相が織り込まれていて、一大絵巻を構成していますから、その歌は人生経験を経れば経るほど価値が増す性質のものなのですね。バルザックの《人間喜劇》のように。

この喜劇とは、神々の物語を意味するギリシア悲劇と対比されるギリシア喜劇、人間たちの物語という意味で使われたと思われ、滑稽な物語という意味ではないでしょう。そういう意味からいえば、ひばりの歌も《人間喜劇》といえると思います。

生前の母から、ひばり公演に誘われた時、ロック少女だったわたしは即座に断ってしまい、今になって後悔しています。
同じ頃、越路吹雪も断り、貴重な人々の歌声を生で聴く機会をふいにしてしまったと歯痒い思いです。
母はどちらも友人たちと行き、よかったといっていました。ひばりは小柄な人だったそうです。

ただ、「この人、歌いながらよく泣くね」と母にいいながらも、ひばりがテレビに出ると、必ずその前に行きました。
学校時代、膀胱神経症に悩まされたことはたびたび当ブログに書きましたが、よくひばりの歌を口ずさんで自分を励ましました。
作家志望も、『柔』『人生一路』を聴いたり口ずさんだりして貫いてきました。現在、その道標は3つとなり、他の2つは前出のバルザックとフジコ・ヘミングです。

それにしても、ひばりと母は3つしか違わず、ひばりを観ると元気だった頃の母を思い出し、なつかしさでいっぱいになります。4:52pm

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コメント

そうですか…
お母様と三つ違いですか…
ひばりさんが亡くなる頃と言えば、昭和天皇の崩御や石原裕次郎さんの死去といったニュースが続いたのを覚えています。順番はひばりさんが一番後だったかな。
歌唱力は抜群だし、良い歌をいっぱい歌っていましたよね。
マイクに白いハンカチはひばりさんだから似会うような気がします。
数ある曲ですが、マダムNさんはどの曲がお好きだったのでしょうか?
やはり応援歌だった曲ですか?
ひばりさんが亡くなって本当の意味で昭和が終わったと言えますよね。
もうあれから随分経ちますね…

投稿: あまみのくろうさぎ | 2007年6月25日 (月) 02:24

どの歌が1番、とはいえないくらいですが、大川ながし、悲しき口笛、マドロスものなんかも好きです。ミュージックフェアという番組でカバーした『無法松の一生』は、そのあまりに粋な姿に、DVDを購入したほどです。勿論、応援歌は大好きです。

順番は、ひばりさんが1番あとでしたね。

投稿: マダムN | 2007年6月25日 (月) 05:23

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