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2007年5月 5日 (土)

「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第83回

 何しろ、女王は、かつてはあれほど華(かがや)かしかった女王連合国の首長は、板に打ちつけられた虫さながらの痛々しいご様子に見えたのです。

 椅子に身を沈めたままのその姿勢からは、力を帯びずに体の平衡を保つのは苦痛でいらっしゃる様が窺えました。

 崇高なあまやかな銀無垢の頭(こうべ)が、力のないお体と不釣合いな対照をなしていました。

 何よりも女王その方を特徴づけていた御身より薫り立つ銀色の詩情は心なしか萎れたような味わいを添えたものとなり果てて、また以前なら女王の全身から美酒のように溢れていた物皆あまねく照らし出すかのような光や御身を取り巻く黄金色の光のリボンまでが、消えてしまったかに見えたのでした。

 それに肉体の苦痛のためでしょうか、お肌(はだえ)の色合いが まるで体内の健康な蠕動を押し殺したようなほの白さで、そこからの翡翠色がかった色調は今にも透けておしまいになるような不安感を与えました。

 女王のこれらの外観の変貌は、わたしにショックを与えずにはいなかったのでした。

 女王はわたしの心中の嵐と、その意味合いにお気づきになったのでしょう。わびしげな、しかしチャーミングな微笑を浮かべてわたしをお見つめになり、「わたくしもね、とうとう、こんな有様になり果ててしまいました。ですが、ほら、頬の辺りはむしろふっくらとなりましたでしょう? 何しろ、めったに動かないんでね」と、他人事のようにおっしゃるのでした。

「女王様。本当にわたしのような者が、姫君の守役を勤めさせていただいてもよろしいのでございますか」

 この事だけは、女王の御口からじかにお聞きすべきことと思われたのでした。〔〕 

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