カリール・ジブラン『預言者』より、友情について
アクセス解析を通して、カリール・ジブラン(カーリル・ギブラン)で当ブログにお見えになるかたが多いことがわかりました。
そこで、わたしがこれまで一番読み返してきた詩を、まだその詩をご存知ないかたのためにご紹介したいと思います。
『預言者』(佐久間彪訳、至光社、1984年)から、友情についての詩です。
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そこでひとりの青年が言った。お話しいただけませんか。友情について。
アルムスタファは答えて言った。
君の友人は君の需(もと)めへの応え。かれは畑。君はそこに愛をもって種まき、感謝をもって刈り取る。
彼はまた食卓。君の暖炉。
君は飢えてかれのもとに行き、平和を求めてかれを探すのです。
友がその考えを語るとき、恐れるな、君自身の心のなかの「否(いな)」を。そしてまたおさえるな、「然(しか)り」を。
また、友が黙するとき、君の心は止めてはいけない。かれの心に耳を傾けることを。
なぜなら友情にあっては、言葉なしに、すべての思い、すべての望み、すべての期待が生まれて、分かち合われるのです。それも喝采を必要としない喜びのうちに。
君が友から離れるとき、歎いてはならない。
なぜなら、君がかれのなかで一番愛しているものは、かれのいないときにこそ明らかになるのだから。山は、それを目指す者には、平野からこそ明らかに見えるもの。
そして友情には、精神を深めることの他にはどんな目的もあらしめるな。
なぜなら自らの神秘を顕わにする以外のことを求める愛は、愛ではなくて、投げ込まれる網にすぎない。そして君の最良のものが友のためであるように。
もしかれが君の引き綱を知らねばならぬなら、君の満ち潮も知らせてやるように。
なぜなら、時間をつぶすための友を求めるなら、いったい友とは何だろうか。
時間を生かすための友をこそ常に求めなさい。
なぜなら、友とは君の需めを満たすもの。君の空虚を満たすためのものではない。
そして友情の甘美さのうちに笑いがあるように。そしてまた楽しみの分かち合いも。
なぜなら、小さな事柄の一滴のうちにも、心は自分の朝を見つけてさわやかになるのだから。カリール・ジブラン『預言者』(佐久間彪訳、至光社、1984年)
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