馬を見ていた息子、ドリュオンの童話『みどりのゆび』、家族の団欒の問題再び
インフルエンザの影響がようやく下火になり、家事が普通にできるようになりました。普通に……といっても、持病があるので、普通の人のようにというわけではありませんが、調子がまあまあいいときくらいには動けます。
喘息の発作はまだ起きますが、体力が戻りましたし、痰が出るようになったので、仮に起きても楽です。痰を出したくても出ない状態は、苦しかった……。
息子は高校時代のクラス会に1泊2日で出かけ、旧交を温めたようでした。帰りに湯布院で乗り継ぎのために40分あったため、下りて、近くにある観光客相手の馬車を見に行ったということでした。
馬車を引いているのは綺麗な、優しそうな白馬だったそうで、動物好きの息子はずっとその馬の仕事や休憩を少し離れたところから見守っていたとか。
馬を管理している人たちが馬の噂をし、この馬は優しくて物事がよくわかっている……通行人があると、自分から静かによけて通ってくれ、客たちに愛想もいい……と褒めていたそうです。
息子が見ていると、観光客に頭を撫でられるとき、馬は嬉しそうにしていたそうですが、観光客がいなくなると、がくっときたような疲れた顔をしていたとか。
馬の苦労がわかったといい、「馬は顔が大きいからか、特に表情がわかりやすいね」といっていました。
同様のことはハムスターを飼っていたときに、わたしも感じたことがありました。わたしが愛撫したあとで、ハムスターがふと疲れた表情をするのを見たことがあったからです。
それまではハムスターを可愛がっているつもりでしたが、可愛がられてくれていることがわかり、はっとしたものでした。
フランスの作家モーリス・ドリュオンが書いた『みどりのゆび』には、同種の事柄がこんなふうに書かれています。
おとなたち、そのうちでも、とくに黒くて大きな鼻のあなや、しわだらけのひたいや、毛のはえている耳をもったおとなは、つやつやほっぺのちいさな子に、しょっちゅうキスするものです。
そうしてやると、こどもがうれしがるからだ、とおとなはいいます。こんなことまで、じぶんかってにきめこんでいるのです。
ほんとうは、うれしがっているのはおとなのほうなのですが。つやつやほっぺのこどもは、おとなをたのしませてやろうとおもって、がまんをしているだけなのです。
モーリス・ドリュオン『みどりのゆび』安藤次男訳、岩波少年文庫
こんな文章を読むと、童話は大人こそが読むべきものだという気がするくらいです。こんなことは大人になると、案外忘れてしまいますものね。尤も、忘れたふりをしているのかもしれませんけれど。
ところで、こうした事柄とつながっているようなつながっていないような話題なのですが、わが家が抱える家庭の問題については、以前から当ブログをご訪問くださっているかたがたはご存知だと思います。
で、この問題に関して、わたしは今年の正月を迎える前に、匙を投げました。匙は何度も投げてきたのですが、いつも拾いにいっていました。でも、今度こそ、天まで投げ上げたのですね。
わたしには難しすぎる問題とわかったので、あの世からこの世を見守ってくださっている高貴なかたがたに、お任せすることにしたのです。
とはいえ、この問題に実際に関わらなければならないのはわたしですから、いろいろと考えることはあったのですが、大学生になってから、帰省中の息子がひどく傷ついた顔をすることがある原因が、もう1つ謎でした。
その原因が昨夜、もしかしたら、とひらめいたのです。
それは、夫は機嫌の悪いときにわたしの知らないところで、息子に威嚇するような、冷ややかな目を向けることがあるのではないかということです。
というのも、帰宅した夫をいつも真っ先に出迎えるのは息子で、わたしは大抵家事に手をとられていますし、娘は出迎える習慣をいつからかなくしています。
息子だけが、子供のように出迎えるのです。ところが、思い出すと、2人が部屋に戻ってきたとき既に、どちらもおかしなときがあるのです。
夫は何か底意地の悪い顔をしていて(わたしはこの時点で夫に違和感と不信感を覚えます)、機嫌のよかったはずの息子が急に暗い目になっていたり、別の部屋に引っ込んだり、わたしの語りかけに投げやりになったりということがあるのです。
姑がそうでした。ある瞬間、急に。実家で、そんな姑を初めて目撃した妹が驚愕したことがあるのですが、わたしはそのとき初めて人前で泣き出しました。なぜって、姑がわたしを底意地悪く睨んだのは、母の法事のときだったのですよ。
なぜ、そんな目で睨まれたかといえば、それよりもっと冷ややかな目でじろじろ見られたり、意地悪をされたりして、それが姑だけの問題ではなく、婚家では誰かを生贄にして楽しむ習慣があることがわかり、わたしと子供たちが婚家と没交渉になったからでした。
わたしの親戚の人々は、わたしが母のことをなつかしがって泣いたのだと思い、優しく見守ってくれました。それがまたせつなかったのですが、妹がわかってくれて少し気が休まりました。人前では、どうしたっていい姑にしか見えないのですから。
自分の夫にこんな疑いを持たなければならないのは決して幸福なことではありませんが、持たざるをえないのです。結局は姑のときと同じ問題が、ここで繰り返されることになりました。
でも自力で解決しようとはもう思いません。別の高潔な力にお任せして、家族の調和ということを模索していきます。子供たちが成人してからもこんな問題に悩まされるとは、想像もできませんでした。
今日は幸い、夫は普通だったのでしょうが、油断はできません。これから気をつけていきます。
ここまで疑わなければならない人を黒(悪)といってしまえれば楽ですが、人間は白でも黒でもありませんよね。程度の差こそあれ、まだらです。
夫は黒っぽい無神経な人である反面、ときには白を輝かせる、ユニークな、魅力的な人でもあるのです。だから、文学があるのでしょう。
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