« 昨日の夕飯(キムチ丼、サラダ・オニオンドレッシング) | トップページ | 昨日の夕飯(焼きししゃも、冷ややっこのベーコンのせ、小松菜と油揚げの煮びたし »

2007年3月13日 (火)

「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第79回

「お久しぶり。宮中に復帰なさったんですってね。おおどかに見えて、ちゃっかり屋らしきあなたのことですもの。首尾よくそうもなさろうかと想像していましたことよ。

 そんなにキョロキョロと女王様を捜したって、駄ァ目。まるで、おっぱいをほしがっているみどりごみたい。

 そんな風でいらして、これから傅育官(ふいくかん)として、みどりごのお守りをなさらなくちゃならないなんて、大変よねえ」

 ヨモギの茶化しに耐える気力は、わたしにはありませんでした。が、頬を恥辱の朱色に染めもせずにいるわたしの弱々しいまなざしが、逆にヨモギを怯ませたようでした。

 彼女はにわかにわざとらしく打ち解け、わたしの耳に溌剌と動く唇を寄せました。

「このこと、側近以外には内緒よ。

 あなたが里へ下ってから一年もしない頃のこと――確か、あなたのお産の頃ではなくて?――女王様はお倒れになったの。

 しいっ! 以来、お体がご不自由でいらしてよ。尤も、半身不随ってほどではないと思うわ。お弱りになったことは確かね。

 これだけ由々しき事態はねえ、自然に宮中の一般の人々にも真相はひろがっていると思うけれど、まあ、今のところ表向きにはね、タルがうまく操作しているようよ」

 ヨモギは一瞬妖気の香る微笑を浮かべました。

 そして、めざとく、こちらにやってくるトシゴリ氏を見分けると、「種馬トシちゃんにお優しくなさらなくては!」とコケティッシュに眼くばせした後、わたしといることに飽きたと言わんばかりにさっと冷たい気配を漂わせて、仲間の方へ立ち去ってしまいました。

「ちょっと外へ出ませんか。此処は、今のところ、わたしがいなくても大丈夫ですから」と、トシゴリ氏はわたしを促しました。〔

|

« 昨日の夕飯(キムチ丼、サラダ・オニオンドレッシング) | トップページ | 昨日の夕飯(焼きししゃも、冷ややっこのベーコンのせ、小松菜と油揚げの煮びたし »