映画『潮風とベーコンサンドとヘミングウェイ』&絵の話
3日に同人雑誌の合評会・懇親会に出かけたあと、無我夢中で過ごした気がする。
その間、夕飯も作らずじまい。いい加減、ごはんを作らにゃ、家族の健康に支障が出たらいけない。これから買い物に出かけなければならないが、帰宅後もその体力が残っていることを祈るほかない。
寒い中の遠出が予想した以上に心臓にこたえたようで、この数日で、これまでにないくらい、ニトロのテープ、舌下錠のお世話になった。遠出したそのときは気が張っていたためか元気だったが、帰宅後、どっと出た。あとで、つけが回ってきた感じ。だいたいこのパターンが多いが。。。
今もテープは貼っているし、胸の圧迫感と背中の痛みに我慢できず、お昼頃に舌下錠も使用した。が、何とか調子は戻ってきていると思う(ご心配おかけしたようで、すみません)。
昨夜BS2で観たランダ・ヘインズ監督の『潮風とベーコンサンドとヘミングウェイ』という老人2人と、彼らをそれとなく見守る女性2人の交流を描いた映画が実にいい味を出していて、よかった。
観ている途中で具合が悪くなり、ニトロを舌下したりしながら観ただけに、老人たちの老いからくる身体的不自由さ、体力のなさが身につまされ、感情移入しすぎるくらいにしながら観た。
老いに対する女性監督の優しいまなざしが感じられた。
荒削りで、腕白坊主をそのまま大人にし、老いさせたような、4度の結婚・離婚歴を持つ、75歳になる元船長フランクをリチャード・ハリス。自分の趣味と生活スタイルに固執する、元理容師でベーコンサンドが好きな、老いた独身男性ウォルターをロバート・デュヴァル。
フランクをそれとなく見守るアパートの大家に、シャーリー・マクレーン。ウォルターが懸想するレストランのウェイトレス・エレーンに、サンドラ・ブロック。
フランクの、船乗り独特のワイルドで子供っぽい雰囲気が、元タンカーの乗組員だったわが父にそっくりで、さすがは演技派リチャード・ハリスだな、と思った。
シャーリー・マクレーン扮するところの中年女性の注意深い、用心深い、そっけなさを装った情感の綾の表現は見事だった。水兵と結婚してレストランを去るエレーンがウォルターに見せる思いやりの表現も自然ながら、どこかアンニュイで、哀感が漂う。
短いあいだに親友といっていい関係になったフランクが死に、それを見送ったウォルターが、映画の終わり際、ダンスパーティーで見せるシックさ。惚れ惚れとしてしまった。
それぞれの登場人物に年齢からくる微妙な光と影を与えた好演出だったと思う。いやー、いい映画だった。
これを書いている途中、大学時代からの友人と、同人雑誌の懇親会で励ましを貰った油絵画家から、それぞれ手紙が届いた(休日で、料理学校に出かけていた娘が下から手紙をとってきた。娘はそのあと英語の速読・速解力をつけるため、公文のSRS教室へ。馬鹿に熱心で、数日に1冊の割合で英語のペーパーバックを読了している。どーして、そこまでやるの~。そんなに楽しいのかしら)。
友人は絵本を自費出版したそうだ。彼女はいい物語を書く。本が届くのが待ち遠しい。わたしも同人雑誌を送ろう。
画家の手紙には、考えさせられることが書かれていた。ラブレターを送るといっていた癖に違~うじゃない! ま、いいや。送ってほしかった絵のパンフレットが入っていたから。ムムッ、この絵は観たことがあるぞ。
パンフレットにある略歴を見ると、高校時代に日本画でコンクールに入選とある。日本画からスタートして、その後、油絵を手がけてこられたようだ。出発点であった日本画の繊細で確かな手法が、油絵の中で生きている。ああ、この人の絵は好きだ。
どこかジョージア・オキーフを連想させる、淡さとこくの両方を感じさせるような、力強さを秘めた優しげな色合い。風景画に描かれた山々の色合いは、そんなふうだ。
養鶏場の鶏たちの絵が、これはまた。。。鶏たちが前から後方にある木々の手前まで、何列にもずらりと並んでいる。このほのぼのとした、ユーモラスな、力強いタッチはルソーを想わせる。後方の木々から点状に飛び立つ沢山の鳥が描かれているのがいい。鶏たちがうんだ卵が白、肌色と使い分けられて描かれているのが、またいい。
そして、この絵。まあ、何てしたたかな、量感にはちきれんぎかりの牛であることよ! 背景の色合いがシックで、洒落ている。抽象画家として著名だった人物に師事されただけのことはあると想わせる。どれかやろう、といわれたとしたら、わたしはこの絵を選ぶ。
ほしいなあ。くれないかなあ。そんなの無理よね。「お高いんでしょう?」と訊いたら、おおらかに笑って「ハハハ、わたしの絵は、本当に高い絵に比べたら安いですが、あのね、ちょっとは高いですよ~」と、おっしゃっていたっけ。
過日招かれていった日本画の展覧会で、ちょうどこの感動とは逆のものを感じ、以来ずっと気分的に鬱屈していただけに、この油絵画家の絵を観て、スカッとするものを覚えた。
わたしが好まなかったその画家の日本画では、日本画をベースとし、西洋画を取り入れながら、どちらも損なっているように感じられたのだ。
絵に、生命が感じられなかった。一見綺麗なのだが、薄っぺらに感じられ、さらには虚無的な、灰色の霧状のものが感じられ、見つめれば見つめるほど気分が沈んできた。
油絵画家の絵を、生で観てみたいものだ。が、上にも書いたように、たぶんわたしは彼の絵をどこかで観たことがあるはずだ。記憶にあるのだ。
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