昨夜の夢&オノレ・ド・バルザックの風貌
バルザックと動物園に来ている。
シロアヒルを見たいのだが、「シロアヒルは呼び出し中です」という園内放送が流れる。
再びシロアヒルの場所に来るが、まだ呼び出し中らしい。ここで弁当を食べるつもりだったが、バルザックが「ここではよそう」という。確かにここは埃っぽいし、糞もある。
最初はブラウスのようなシャツとズボン姿だったバルザックだが、いつ着替えたのか、諷刺画にあるような王子様風の派手な姿になっている。膨らんだ短いズボンに飾りのある袖、襟、あの有名なステッキを手にしている。
シロアヒルの場所の横に、マガモかアオクビアヒルかはわからないが、水鳥が鞠のように丸くなって点在し、眠っている。
たとえ夢の中の出来事とはいえ、バルザックと一緒にいられただけで嬉しいので、解釈はよします。今年に入ってから、バルザックが出てくるのは2度目です。1度目に出てきたときは、子供時代の可愛いらしい溌剌としたバルザックでした。
わたしの夢に出てくるバルザックは、本で紹介された写真や肖像画や諷刺画がもととなっているようです。アンリ・トロワイヤ著『バルザック伝』(尾河直哉訳、白水社、1999年)のカバーに使われている白いシャツ姿のバルザックの写真は、まなざしが透視的といっていいくらいに鋭くて、それでいて冷たさはなく、尋常でない彼の資質を感じさせます。
何ともすばらしい眼なのです。わたしはこのバルザックと、若かりし頃を描いたベルニー夫人をそれぞれ写真に撮って、前の携帯電話の待ち受け画面にしていました。わたしの(創作ごころの)パパとママはバルザックと、彼の愛人であり文学上の育ての親でもあったベルニー夫人です。
前掲の本から、バルザックの風貌を同時代人たちがどう捉えたかをご紹介しましょう。
太った小柄な方でした。服の仕立てが悪いので、よけい不格好に見えました。手はほんとに素敵。ひどくぶざまな帽子をお召しになっていましたけど、帽子をお取りになると、そんなこともうどうでもよくなります。わたくし、あの方のお顔にただただ見とれておりましたから。〔……〕おわかりにならないでしょうねえ、あの額とあの眼差し。ほんと、実際ご覧になっていない方にはねえ。大きな額でございましてね、まるでランプの光が照り映えたように輝いておりました。褐色の目は一面に散った金砂子が光っていて、口ほどにものを言う目とはあのことでございましょう。鼻は大きくごつごつしていて、口も大きゅうございました。歯はぼろぼろでしたけど、いつもお笑いになっていらっしゃって、濃い口髭をおたくわえになって、長い髪は後ろに掻き上げておいででした。
ポムルール男爵夫人の回想でしたが、お次は若き日の詩人フォンタネーの日記から。
ついにその男を目にする。輝き始めた栄光の新星を。太った若者だ。生き生きとした目、白いベスト、薬草売りのような風采、肉屋のような服、金泥師のような雰囲気。それらが合わさるのだからものすごい。この男は典型的な文学商人(あきんど)なのだ。
そして、ラマルティーヌによる観察。
彼は太って、がっしりと胸板も厚く、ミラボーのようにたっぷりとしていた。顔からは、知性にもまさって、気さくな人のよさがうかがえた。〔……〕この男が善良でなかろうはずがない。
最後に、『クロニック・ド・パリ』という雑誌を一時期経営していたバルザックに執筆者として招かれた若き日のテオフィル・ゴーティエによる描写をご紹介します。
修道服の襟元を大きくはだけて、円柱の柱身のように丸い首を見せていたが、筋張ったところのない、白い繻子のようなその首は、より赤みを帯びた顔と対照をなしている。厚く、うねるような唇はよく笑い、〔鼻は〕先が四角くすわって、二つに分かれており、〔額は〕美しく気高く秀で、顔の他の部分よりも際立って白〔く、その眼ときたら吸い込まれるように黒くて金色にきらきらと輝き、〕鷲でも負けて瞳を伏せてしまうほどの、壁の向こう側でも胸の内側でも見透かすような、君主の、見者の、猛獣使いの眼だ。
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