月とロルカ
娘に写真を撮って、とせがみましたが、何やら忙しい様子で、相手にして貰えませんでした。
仕方なくベランダから自分で撮りましたが。。。 黒い空に白い点のように見えるのが三日月です。実際には金色を帯びた黄色い月で、ぴかぴか光って見えました。
月といえば、思い出されるのがスペイン生まれの詩人・劇作家であったロルカの詩です。彼の詩には月がかなりの頻度で顔を出します。ロルカの月は、どちらかというと不吉な月です。
ただわたしにとってロルカといえば、一番忘れがたいのは、月の出てこない次の詩です。『世界の詩集 19 ロルカ詩集』(角川書店、昭和47年)からご紹介しましょう。
村
ロルカ作・小海永二訳
禿山の上には
十字架の立つ丘。
清らかに澄んだ水と、
百年を経たオリーヴの木々。
路地には
顔を覆いかくした人々。
そして 塔という塔の上には
回る風見。
とこしえに
回る風見。
おお 見捨てられた村よ、
泣きぬれたアンダルシーアの!
ロルカは、スペイン内乱時の1936年、ファシスト党員たちの手によって銃殺されました。
彼はある地方の寒村に泊まった晩、廃墟となった中世の城館で一匹の羊が黒い豚たちに襲われ、むさぼり食べられる光景を見、それが死の予兆であるかのように怯えたと詩集の解説にあります。
豚が羊を食べるなど、とても考えられないので、実際には黒い豚と見えた動物は何だったのだろう、と思います。もしかしたら幻影だったのでしょうか。
いずれにしても、ロルカが羊の惨劇を見たのは太陽が差し昇ってくる頃で、夜明けの青白い光の中での出来事だったようです。
ロルカの次の詩は不吉で、しかも何処か共鳴を誘う、悲痛にして美しい詩です。この詩には月が出てきます。生きていれば、ときにこの詩のような不吉な感じをわが身に覚えることは誰しもあるのではないでしょうか。
騎士の歌
ロルカ作・小海永二訳
コルドバ。
はるか、ただ一つ。
黒い小馬、巨大な月、
そして、おれの鞍嚢にはオリーヴの実。
道は知っているけれど
おれは決して着かないだろう、コルドバに。
平原を越え、風を切り、
黒い小馬、赤い月。
死が おれを
コルドバの塔から ねらっている。
ああ 何と長い道だろう!
ああ 勇敢なおれの小馬よ!
ああ 死がおれを待ち受けている
おれがコルドバに着くより先に!
コルドバ。
はるか ただ一つ。
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