阿部謹也氏死去
西洋社会史研究の第一人者であった阿部謹也氏がお亡くなりになったとか。
謹んで、ご冥福をお祈りいたします。
阿部謹也氏の『ハーメルンの笛吹き男』を読んだのは、もう11年も前になりますが、そのときの鮮烈な印象が忘れられず、ときどき再読させていただいていました。
その初読のとき、当時入会していた同人誌「くりえいと」から平成7年に別冊付録として発行された「れ・くりえいと」に寄せたわたしの読書案内がありますので、ここに紹介させていただきたいと思います。
○○○
阿部謹也著『ハーメルンの笛吹き男』(筑摩書房、1988年)を読んで
子供たちが笛を吹く男によって何処かへと連れ去られてしまうお話を、グリムのもので読んだかどうかは定かではないけれど、そのお話の秘密めいた雰囲気と読後の寂しさは忘れがたい印象として残っていた。
同じように幼児期にこのお話に魅了されたことのある著者は、お話の原型を求めて、13世紀ドイツの小さな町ハーメルンにまで分け入っていく。
お話のもととなった伝説は、ハーメルンで起こった子供たちの失踪事件からうまれたらしい。
それを伝える最も古い記録はハーメルン最古の教会のガラス絵とみられ、ガラス絵碑文には「ヨハネとパウロの日(すなわち6月26日)にハーメルン市内で130人の者がカルワリオ山の方向(すなわち東方)へ向かい、引率者のもとで多くの危険を冒してコッペンまで連れてゆかれ、そこで消え失せた」とあった。
しかし、失踪事件を伝える古い中世資料にすらも失踪の原因は示されていず、その時点ですでにそれが謎となっていたことがわかる。それは何故か。
手がかりを得るために著書は、当時のハーメルンという都市の性格と問題点を探り、探る過程で、そこに生きた人々の痛ましい現実を明らかにしていく。
専門知識の散りばめられた歴史研究書ながら、そこには悲劇に遭遇したハーメルンの名もない人々に対する著者の素朴な共感が通奏低音として清冽に流れていて、飽きさせない。
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