「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第56回
冬が終ろうとする頃、クニでは高い熱の続く風邪が大流行し、わたしは熱冷ましを処方してあげるのに大童でした。
処方してあげたのは、蚯蚓(みみず)をきれいに乾燥させて粉にしたもので、服用すると解熱作用があります。これぐらいのものは家庭の常備薬として誰にでも用意しておけるはずのものですので、作り置きしておくことを勧めながら処方しました。
処方しながら、神殿での先進的な暮らしに身を染めて里に帰った人間としての使命感が芽生えてきました。そこでわたしは、私塾を開いてみたのでした。
クニの文化的なレベルをいくらかでも高めたいという心意気ばかりが上滑りしがちではありましたが、十年の間に習い覚えた事柄を分類、整理して、カリキュラムを組みました。
こうして、一年が瞬く間に過ぎ去りました。〔続〕
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