「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第40回
宮殿に帰り、ここでの初めての食事にありつきながらも、わたしは酔い心地でした。
あのような舞姫は、月世界にこそ置きたいものです……。芋(※サトイモ)をパクつきながらも、あの女人を使って歌劇を上演したらすばらしいだろうなあ、などと夢想してしまいます。
「あなた、よほどおなかがすいていたのね。すごい音だったわ」と、わたしに話しかけた声の主は、夕方、二通りの衣を持ってきてくれたおとめでした。
おとめは、笹の葉のような切れ長の眼をきらきらさせ、小馬鹿にした調子で、わたしを眺めています。
わたしが今いる室は、官女(※宮中に仕える女性)たちの食事の間でした。広い間に、大勢の官女たちがくつろいでいました。7、80人はいたでしょう。
髪あげをしたばかりの12歳から15歳くらいまでのおとめたちが、20人ほども輪になって花吹雪のように笑いさざめていてるのをよそに、こちらの方では、年のいった官女たちが5人、今宵の舞姫について噂していました。〔続〕
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