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2006年7月16日 (日)

「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第31回

『おとめよ。倭の習俗が中国の北よりも南と似通っていることを、そなたは知らないわけではあるまい。

 ところが、女王家は曹氏一族にゆかりがあり、大乱の際も女王家は、会稽(かいけい) (※の中国浙江省)太守をしていた男の力を借りた。この人物は、魏を建国した曹操の縁者なのだよ。

 中国で魏呉蜀(ぎごしょく)の三国が鼎立(ていりつ)するようになり、女王が魏寄りに傾くのも無理からぬことではあるが、真に倭のことを考えるならば、北の魏ではなく、南の呉。国内において女王連合国に属さぬクナ国。

 これらと大いなる同盟を結べば、侵略の懼れそのそのが消えよう』

 わたしは身を震わせて、イサエガを見つめました。『クナ国と同盟ですって……あのクニの王が、味噌も糞も一緒にする旺盛な物欲の持ち主であることくらい、わたしですら知っています』

『そなたにそう映ずるだけの話である。大陸系移民の多い女王連合国と南方人の渡来の多いクナ国とは膚合いが異なるが、同じ倭人だ。あのオールドミスの狭量も、相当なものよの』

 イサエガの本音を聞いたわたしは、ただ凍ったように彼を見つめるばかりだったのを覚えています。こうした後に聞くことになったイサエガの本音が、既に、謁見室に闇をつくっていたのです。〔

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