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2006年7月13日 (木)

「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第29回

『キツネの毛皮にくるまれて、捨てられていた。ただの捨て子なら珍しくないが、おとめよ。タルはお上に役立ちそうな光(オーラ)を放つ赤子だったから、上司に報告したという訳であった。

 おそらくタルは、南方(※太平洋諸島)からの渡来人とのあいだにできた子で、産み落とされて日が浅い頃に、捨てられたのだろう』

 わたしはタルを思って、胸がいっぱいになりました。『大月氏国の生まれの子だと……ナシメさんが……』

『ナシメ氏のロマンだな』と断じ、イサエガは皮肉な笑いを浮かべました。

『ところで、おとめよ。倭のことを考えるならば、大人階級をささえる下戸のための合理的な糧こそ、必要なのだ。

 道教の知識を集めているのはわたしも女王も同じだが、女王の集め方は装飾的か、さもなければ、形而上的にすぎる。

 「外丹」、古くは黄白の術ともいう錬金術があるというが、そうした実際に金銀をつくる術よりも、優雅なる女王様は、その外丹を内面的なものにし、哲学化した「内丹」理論の方がお好きという次第だ』

 その時わたしは、断崖に立った時のように冴え徹ってイサエガを見、反駁していました。〔

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