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2006年7月 4日 (火)

「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第22回

 眼の前に人々が居心地よく座り、談笑をやめた顔を思い思いにこちらへ向けるのが見えました。

 白萩を生けた大きな花甕と、美しい細工を施した香炉があります。

 わたしが中に入りかけた時に、壁に寄りかかって立ち、快活な笑いと共に何かいっていた華奢なお年寄りが、あたかも銀色の漣(さざなみ)が寄せるように、わたしたちの方へ歩んできました。

 このお方こそが30ものクニグニをまとめあげている偉大なカリスマ性の持ち主であるお方、わたしたちの女王様なのでした。

 銀無垢の輝かしい髪をあっさりと結いあげ、貝紫染めの御衣(みけし)……、銀色の余韻は消えたかと思うや、波濤となって、芋名月の夜の真っ白な月のような、可愛らしい女王のお顔がわたしを見つめていました。

「お父様は、お気の毒なことでした」と、女王は、かなり昔のことになってしまったわたしの父の事故死について、お悔やみを述べました。

 はっとするほど、さわやかに響くお声でした。〔

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