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2006年6月21日 (水)

「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第9回

 わたしは叔母の腹立ちを納得しながらも、好奇心を抑えることができなくなりました。

「叔母さん。女王様の宮殿は、神殿でもあるのでしょう? そこには子供もいるって、お父さんが話してくれたことがあるの。それは、どんな子? どうしたら、神殿に入ることができるのかしら……」

 とたんに叔母の眼はぽっかりと見開かれ、顔色ときたら翡翠のように青ざめてしまい、薄い唇も開かれて――と、叔母の顔色が尋常でない様を呈したので、わたしは恐くなりました。

 ややあって、叔母は震える瞼を閉じ、低い、怒りを帯びた声で断言するのでした。「そういう窺い知れないことに興味を抱く時期は、誰にでもあります」

「怒ることないじゃないの、叔母さん。わたしはただ……」とうろたえ、取り繕おうとしました。「お母さんの納棺の日に、風にいちゃんと話したの。女王様が蒐集なさっている知識(おしえ)のことや何か……。それで、ちょっと、興味が湧いただけなんです」

 叔母は顔をわずかに傾げて、真っ直ぐにわたしを見ていましたが、ふとグミを摘み、1つ食べました。

 そして、「あの縁者のいうことをまともにしちゃ、いけませんよ。食べてしまったら、花を摘んできてくれない? このあいだの市(いち)で手に入れた壷に活けようと思うの。

 ああ、ついでにツルバミ(※ドングリの古名)も集めてくれたら、なおいいわ。ツルバミは滋養があるし、保存食にはもってこいですからね」と、打って変わってサバサバした口調で、叔母はわたしにいいつけたのでした。〔

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