« 「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第5回 | トップページ | 精神安定剤の思い出 »

2006年6月18日 (日)

「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第6回

 山の神様のお祭りは、このクニの父を含む数名の官吏の他、ヤマト国始め女王連合国に属する各クニの代表官吏、といったお歴々で厳かに執り行われる特別のものでしたけれど、農耕祭典の場合、祭場は社交の場でもありました。

 お祭りの日、母は舶来のやわらかな衣に白珠のネックレスをして、緑髪を美しく結い、朱で顔面に化粧をしているのでしたが、正装したその姿は、わが母ながらあでやかな貴婦人でした。

 春は豊作祈願、夏は虫送りと雨乞い、秋は収穫儀礼、冬は予祝(よしゅく)儀礼(模擬儀礼)といった祭典がありました。虫送りは虫の姿をとってあらわれた悪霊を鎮め送る儀式、予祝儀礼は来る年の豊作を祈願して農作の真似事をする儀式です。

 祭場は神韻の気の漂う森の中にあり、そこにはご神木がありました。神様がこの世にお下りになる時の目印となる木ですので、特別に選ばれた神聖な木なのです。

 わたしは神木に選ばれたオガタマの木を見上げるとき、木自体が深緑色に純白の粒々を混じえた霧状の清々しい精気を発散しているのが見えました。ただわたしには、このオガタマの木に限らず、どの木々も精気を発散しているように見えます。

 ところで、儀式が終ってから、しばしば歌劇が上演されました。歌劇の始まるのを待つあいだ、わたしの胸はぱちんと弾けそうにふくらんでしまいます。そして、歌劇の幕が開くと、わたしの体は陰って、虹色の光を放つことになるのでした。〔

|

« 「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第5回 | トップページ | 精神安定剤の思い出 »

自作小説「あけぼの―邪馬台国物語―」」カテゴリの記事