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2006年6月14日 (水)

「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第2回

「何処へ行ったのかと思ったじゃないの。お母さんについていてあげなくては」

 叔母にいわれ、また棺の処へ座りに行きましたが、わたしは母の傍へ行くのが恐かったのです。

 帰らぬ人となった母は厳粛で、遠い人のように思われました。それでいて、その母は、わたしの琴線に触れる母そのものを保ってもいました。緑変した面で、母はしずかに横たわっているばかりなのでした。もう、わたしの名を呼ぶこともなく……。

 人々は、わたしをマナちゃんと呼びます。でも、亡くなった母以外の誰が、マァナというあれほどのこぼれるような響きで、わたしの名を呼んでくれるでしょうか。

 涙を拭こうとして、わたしは握りこぶしの中の木の実を思い出しました。母の鎮魂のために歌い踊ってくれている人々の中に、あの女の人が混じっていはしないかと、わたしは眼をこらしました。お酒を注いで回っている人々の中には?

 しかし、そのような女の人は見あたりませんでした。

 夕闇がしのび寄り、やがては人々から射していた光も見えなくなりました。わたしは叔母に抱かれて、重苦しい眠りを眠りました。そして、あけぼのの空気の冷たさにぶるっとなって眼覚めました。

 10日間はこのようにして暮れてゆきました。〔

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