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2006年6月13日 (火)

「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第1回

  第一部 洛陽へ

  第一章

 父は鉱山を視察中、そこで生じた事故で負傷し、それがもとで死にましたが、母までも看取り疲れから病を得、帰らぬ人となりました。わたしはその時、9つでした。

 泣いているわたしの掌に、誰かが木の実を握らせてくれました。顔をあげて見ると、わたしの知らない、背の高い女の人でした。

 その人の上品さに、心を打たれ、わたしはお礼をいうのも忘れました。

「すぐに迎えに来ますから、待っていてくださいね」とその人はいい、くっきりと美しいまなざしで、じっとわたしを見ました。「お嬢ちゃんには、わたしの心の色合いが見えるでしょう? わたしはどんな色合いなんでしょうね……」

 女の人は面白そうに尋ねましたが、あけぼの色の衣で身をかがめると、さっとわたしを抱きあげました。あまやかな薫りがわたしを包みました。

 すると、わたしはすすりあげてしまったのです。色のことを尋ねるなんて不思議に思いましたが、なぜか、説明のつかない幸福感でいっぱいになったからでした。

「おやおや、泣きべそさん。異国の薫りのする男の子が、待っていますよ」と謎のようなことを清(すず)しくささやき、女の人はわたしをおろしました。

 その時、「マナ。マナちゃん……!」と、木陰から叔母のわたしを捜す声がして、振り返りました。気づいたとき、女の人はどこにもいませんでした。〔

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