れくいえむ ~その4~1995.4
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死者は、
彼の世へと赴くまでの一時を、しばしばわたしの家で過ごした。
肉の装いを捨てた、内的姿で――。
あなたは招かれざる客のように、
不具合に感じられた。
この世の様式をなくしているのに、
彼の世の様式は、まだ使い慣れず……。
電話台と食器棚の間や、散らかったテーブルと天井の間で、
ふいにあなたの感じを見い出すのは、
まことに奇妙なことだった。
肉の装いを捨てたあなたは、元気な様子で、
(死者の晩年を病気が傷めつけた!)
変わりない気韻、知力、
鋭敏で、
好奇心と必要とから教え子の飾らぬ姿を見定めようとし、
そのうち、
自らの生涯の仕事についてのわたしの理解度に、
懸念を覚えた様子で、
遂には、その無理解ぶりを激しく怒り、
行ってしまった――。
(瞬間、室内に干した洗濯物がみな落ちた)
あなたの短気も、わたしの独善も、
相変わらずだったけれと゜、
思いやりの芳香は、
さゆらぐ心と、なおも不滅の心の、
察しあいから薫った。
(なつかしい乳色の光が、いくたびかわたしを包んだ)
後日、
死者は彼の世から、便りを送ってよこした。
無際限のうちとけにも似た、微笑に代えた便り。
さしもの、
わたしの硬い眠りをも、花ひらかせる便りを。
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