« 「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第11回 | トップページ | 「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第12回 »

2006年6月24日 (土)

れくいえむ ~その1~1995.4

             81歳で没したわたしの心の師であった女性のために

          大気が冷え、桜が開いた。
          死が満ちた。
          閉じた瞼の下で、唇の間にも、
          死が満ちた。

          白木蓮の色をした死者の顔は、見覚えがない。
          むしろいつか想像した気がする顔は、
          封印している。
          はかりしれない困難、おびただしい吐息を。

          完結した死者の鼻孔、晒された面差し。
          マーガレットの花にまもられて。

          雨が棺をぬらした。
          やわらいだ土を踏み、車を駆って、
          人々は置きにいった。
          炉は燠り、炎 炎 炎、
          死者の難儀がやんだ。

          骨を、かまびすしい女たちが囲む。
          きれいな骨に見惚れて。
          男たちはふるえ、エレガントに控えた。〔

|

« 「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第11回 | トップページ | 「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第12回 »

神秘主義」カテゴリの記事

」カテゴリの記事