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2006年6月29日 (木)

「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第17回

 ここは、ツクシ(※筑紫は九州の古名)を縦横に結ぶ交通の要衝でした。

 大雑把にいえば、ツクシを横に真っ二つにしたとして、上半分が女王連合国にあたり、女王国であるヤマトのクニはその東部に位置します。そして、ここに南から合流してきている川を遡れば、女王連合国に敵対している恐るべきクナ国に達しました。

 また女王連合国から海を隔てた東の方には、女王連合国と友好的なクニグニがあり、そのさらに東の方には、窺い知れないクニグニがありました。

 ところで、わたしの里から女王国の玄関口へは、この時にわたしたち一行がとった道とは別の、南へ迂回しない楽な陸路があったはずでした。

 なぜ、わたしたちは深い山を二つも越えてまで、あの水郷のクニを経由しなければならなかったのでしょう? 一行がクナ国との国境域を視察する任務を帯びていたとでもいうのなら、話は別ですけれど。この時の不自然な旅程のことは、後になって度々思い出されたものでした。

 わたしはまた輿に乗せられ、一行は水郷の地を出発しました。そして北へと流れる川に沿って、いよいよ女王連合国のハートへ、中枢へと向かったのでした。

 やがて、郷愁をくすぐる風がわたしの鼻孔をかすめました。
「この風は……」と思わずつぶやくと、わたしの乗る輿の近くにいた馬上の男がいいました。

「そなたが嗅いでいる風は海の香りを含んでいる。それを潮の香というのだよ」
 あっと、わたしは魂の砕けたような声をあげました。

「海――、海の近くに女王様の都はあるのですか?」
「如何にも。尤も、ここからは海は見えないが――、さあ見るがよい」〔 

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