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2006年6月28日 (水)

「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第16回

「嬢様、ゆたかな川を見なさらんかな」

 船頭の声にわたしは眼を覚まし、あっと驚きの声をあげました。いつのまに、輿から舟に乗り換えさせられていたのでしょう?

 わたしたち10人から成る一行は、1晩野宿して2つの山を越えました。鬱蒼とした山中にあって、わたしはただただ疲れを覚えていました。それで、うとうとと眠るばかりだったのでした。

 今、三方から川が流れ込む大きな泉のように見える美しい川に、わたしの乗る舟は浮かんでいます。光の遊ぶ水面を分けて、舟はゆるやかに岸へ向かっているところでした。

 イサエガと馬は陸を行っているのでしょう、姿が見えませんでした。

 水脈ほど、なめらかな道があるかしら……とわたしはつぶやきました。

 別天地に来たような、くっきりとした雰囲気のある土地でした。陰影深い樹木、穏やかな風、真っ白な雲は湧くようでした。

 極上のアユのとれるこの水郷のクニは、女王国の西の入り口でした。わたしたちはこのクニに逗留しました。〔

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