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2006年6月26日 (月)

「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第14回

 変な味のする飲みにくい湯を何回も戻しつつ飲まされて、わたしはまた眠りに陥りました。生死の境の灼熱の眠りの中で、夢を見ました。……

 わたしは闇の中に不安な思いで立っています。

 ふと斜め後方を見あげると、何か黒々とした、どろどろとしたものが見えます。

 それは円い、奥深い、摩訶不思議なものに見えていますが、見ているうちにみるみる形をつくってゆき、わたしにはそれが、わたしに向かって差し出された1本の褐色の腕であることがわかります。

 わたしは戦慄を覚えますが、その腕が一条の光なのかもしれないと思い、その腕に向かって、叫ぶように自らの手を伸ばします。

 腕は、あっという間にわたしを引きあげ、小脇に抱えると、洞窟の中をずんずん走ります。

 黒々とした髪を靡かせた、精悍な若者です。

 わたしは不安なままに、ある種の甘美さを覚えています。

 随分走ったところで若者は上方を見あげるのですが、岩の割れ目からは別世界が見えています。

 割れ目に手をかける前に若者は、わたしの顔の方に身を屈めて素早い口づけをします。

 その唇がわたしの唇に醸した、芳香――〕     

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