映画「ヒトラー最期の12日間」を観て―2005.10―(Ⅱ)
衝撃的だったのは、当時のドイツ人と現代日本人があまりに似て見えたことだった。戦後日本人が如何に欧米化されたかが、よくわかる。生活習慣、食べ物、衣服、物の考え方。
ナチズム狂いの筆頭に挙げられてもおかしくないゲッベルス夫人のような人物さえもが、現代日本人と変わらないか、もっと洗練された教養と日常感覚という基本があって、その上にナチズムというラディカルな思想がいささか分厚く載っている感じがあるのだ。
ヒトラーは現代日本人のどの男性も未だ到達していないほどに紳士的で、フェミニストであって、身近な人々には最期のときまで濃やかな心遣いを示す。彼の中では、独裁と徹底した個人主義・民主主義・教養主義といったものが奇妙な混淆を見せている。
ナチスの時代を歴史的に検証できる立場にいる現在のわれわれからすれば、ヒトラーという人物が思想的には当然、日常的にも相当に異常で低レベルであったとみなせるほうが都合がよい。特殊な例に分類でき、あまり自分のこととして考えずにすむからだ。
しかしながら事実はおそらく、そうではなかったのだろう。
なぜなら映画は、2冊の著書をもとにして製作されている。一冊は、映画と同名の歴史ドキュメンタリーだ。著者は1926年にベルリンに生まれた歴史家・ジャーナリストのヨアヒム・フェスト。もう一冊は、ヒトラーの個人秘書として地下要塞で過ごし、2002年まで生き延びたトラウデル・ユンゲが自らの体験を終戦直後に書きとめておいた手記だ。
邦訳されている2冊を購入し、目を通したところでは、映画はこれらを忠実に再現しているように思えた。〔続〕
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