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2006年6月 6日 (火)

映画「ヒトラー最期の12日間」を観て―2005.10―(Ⅲ)

 また、私に映画がなまなましく感じられた理由の一つに、映画鑑賞から遡ること一月前の9月11日にわが国で行われた第44回総選挙のことがあった。

 小泉首相は、参院での郵政法案の否決を認めず、強引に衆院解散・総選挙にもっていった上、内容の極めて不安なその法案に反対した議員に、メディアが「刺客」と呼ぶ対立候補を立てて再選を阻もうとまでした。

 そして大衆は、民主主義から明らかに逸脱した奇怪としかいいようがないこの選挙劇「小泉劇場」を面白がり、喝采を送った。ワイドショーで小泉首相をセクシーといったコメンテーターがいたが、彼はヒトラーが女性たちにセクシーといわれていたことを知っていただろうか。この類似性は私をぞっとさせた。

 勿論セクシーだとかそうでないとかが問題なのではなく、政治家であるにも拘らず、理性に訴えかけるより生理に訴えかけ、あたかも芸能人であるかのように大衆の目に映るという異様さが問題なのだ。

 このことは、彼が大衆に人気を博していればいるほど、ある不安を感じさせる。

 だが今や小泉政権は独裁体制に近い。郵政民営化法案もあっさりと成立した。国会で、日本政府がこの法案をめぐってアメリカ政府筋と週に一度の会合を重ねていると野党が追及していたことがあったが、首相はこの件をうやむやにした。

 野党はそれまでにも、郵政法案へのアメリカ政府の過剰な関与を指摘していたのだった。日本の法案にアメリカが何の用があるのかと、質問した議員は怒りをあらわしていた。

 あるニュース番組では、民営化法案が成立した夜になって、郵政民営化の成功例として日本政府が挙げてきたドイツポストの実態を現地取材して報道した。郵便料金は値上がりし、リストラによる職員不足でサービスは低下、ネットワークに寸断の兆しが見えるという。

 なぜ選挙前に、このような報道が丁寧になされなかったのかと疑問がわく。郵政民営化に反対して罪人さながら自民党を追われ、国民新党を立ち上げた綿貫代表のホームページでは、民営化した海外の国々の現状とアメリカ側からの要求が詳細に報告されていたのだが――

 わが国の大衆は、正しい情報をもたらしてくれる人物に石を投げて厄介払いしようとし、嘲笑さえするのだ。〔

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