« 「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第10回 | トップページ | れくいえむ ~その1~1995.4 »

2006年6月23日 (金)

「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第11回

 お師匠さんは、そうか、と答えたきりでした。そして、屋根を打つ雨音を聴く風情でしたが、口を開きました。

「かの大国人は、この国のわしたちのことを倭人(わじん)と呼びよる。小さい人という意味なんだそうじゃ。小さくとも、気概は一流じゃ。わしたちのしらべには格調の高き、独自のものがあるはずじゃの。あの方も、そう思うとりなさる」

 あの方とは誰だろう、とわたしは口をぽかんと開けました。 お師匠さんは、盲目の顔をしずかにわたしに向けました。「女王様じゃよ」

「女王様?」
「年に1度、ヤマトのクニから迎えがきての、わしの琴は神殿の至聖所で鳴るんじゃよ。そのあとで謁見があってな」

「女王様は、どのようなお方なのでしょう?」と、昂ぶりのあまりの気の抜けたような声で、わたしは問うのでした。

「声の響くお方での――、鋭敏な感じのするお方じゃな。貝紫染めのお召し物を身につけておいでじゃあるまいか。お傍で、潮の香がしたで」

 父も女王様に謁見していたはずですが、どういう訳か、女王様のことを父から聞いた覚えはありませんでした。〔

|

« 「あけぼの―邪馬台国物語―」連載第10回 | トップページ | れくいえむ ~その1~1995.4 »

自作小説「あけぼの―邪馬台国物語―」」カテゴリの記事