カテゴリー「エッセー「文学賞落選、夢の中のプードル」」の1件の記事

2006年4月15日 (土)

文学賞落選、夢の中のプードル

 作家の卵を続けてきて、35年目に入った。処女作は中学1年生のときに書いた『太陽のかがやき』という題名のジュニア小説だった。そのとき、もう作家になった気分でいたものだ。肉体はもう壊れかけているというのに、その気分だけが今もぬくぬくと生き続けている、この異様さ。

 今回の文学賞落選のショックは大きかった。その賞を受賞したからといって、作家になれるというものでもないだろうが、作品が公開され、いくらかでも多くの人々の目に触れる戦慄と喜びを味わいたかった。受賞できるチャンスなんて、めったにない。

 もっとも、落選は最初から予見できていた。『O賞』の最終選考委員たちの顔ぶれとこれまでの選評傾向から落選は火を見るより明らかだったのだ。それなのに、夢を……夢を見た。

 夢といえば、わたしの夢の記録ノートは9冊目に入った。分析は進んでいる。夢については、後日また書きたいが、近代神智学の創始者ブラヴァツキーは『実践的オカルティズム』(田中恵美子&ジェフ・クラーク訳、竜王文庫、平成7年)の議事録の中で、深みのある考察を行い、こんな興味深いことを書いている。「透視力が進歩するのは『夢を見る』といわれている力を育てることによります」

 わたしの眠りの夢の中で、そのとき手がけている作品は赤ん坊、創作意欲は雪のように白いプードルとなって現れる。以前、『K文学賞』で賞を逃したとき、その中央選考のあるあたりの夜、赤ん坊が何者らかに殺害される夢を見た。青いおくるみを着た赤ん坊の愛らしさはあまりに生々しかったため、赤ん坊を襲った惨劇……その衝撃と悲嘆は、わたしには現実のことと区別がつかないほどだった。

 あの作品は欠陥のある作品だったかもしれないが、条件さえ整えば、世に出られるだけの文学的価値を秘めていたのかもしれないと思う。そして、プードルはいなくなった。再び書く意欲が湧いたある日、野原に埋まっていたらしいプードルが土を押しのけて出てくる夢を見た。今回は、赤ん坊を死産する夢を見た。プードルはどこでどうなったのか、ずいぶん姿を見ていない。

 ところで、わたしはプードルにひ弱な印象を抱いていたのだけれど、最近になってイメージが変った。うちは賃貸マンションで犬を飼えないが、犬が好きで、ときどき『犬のカフェ』という名のお店に寄り、犬たちと遊ばせて貰う。そのお店では、犬用品の販売、トリミング、一時預かりをしているが、何しろ犬のカフェだから、飼い主に伴われた犬がやってきて休憩したり、遊んでいったりする。

 その日は、クルミ色の毛色をした活発なプードルが4匹いた。プードルはボールが好きで、飼い主がとめないと、気絶するまで遊ぶそうだ。自動で転がる機械仕掛けのボールを、彼らは憑かれたように追う。他にダックスフンドとシュナウザーがいたから、幼稚園さながらの騒ぎだった。

 プードルは『鉄腕アトム』的な脚をしている。長くて、先が太い。そして、いとも自然な様子で立ち上がる。下顎は、相当に頑丈そうで、口を開けると、ちょっと鬼みたいだ。そして何より、プードルは賢いことで有名だ! 夢で、このプードルがわたしの創作意欲のシンボルとして現れるということは、わたしの創作に関する力量は、そのような特性を持っているということに違いない……!

 わたしの白いプードルは、落選の憂さを晴らすために遊んで跳ねて、どこかで遊びつかれて気絶してしまったのかもしれない。そのうち、きっと帰ってくるだろう。

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